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11月19日
発展する中国経済
黙々と働く若年労働者
中国経済は素晴らしい発展を遂げた。上海、北京、香港、杭州等の空港は成田空港より豪華になり、沿岸地域の主要都市はほぼ高速道路で結ばれた。大都市のインフラは整い、堂々たる一流ホテルが多くなった。
製造業では、鉄鋼、石油化学等の産業の他に、家電やIT関連等の産業が目覚ましく成長した。現在の中国は冷蔵庫、テレビ、洗濯機、オートバイ、IT部品、ディスクトップ型パソコン等で世界一の生産国になった。今まで工業発展をリードしたのは外資企業だったが、最近では国有企業の子会社が目立って成長した。
中国経済の強みは、日本の20分の一以下という低賃金の膨大な若年労働力と、素晴らしい管理能力や商品開発能力を持つた高学歴のマンパワーの存在だ。また中国経済の成長とともに海外留学生や海外の研究所・大学で研究していた人々が続々と帰国して、ハイテク産業のレベルを向上させた。
電子部品、パソコン、テレビ等の工場では20歳以下の少女が黙々と働いている。彼女たちは短期間で仕事をマスターし、目がよいので、細かい作業を正確に行う。また作業の改善について積極的に意見を述べるようになった。中国の内陸部には7億から8億の貧しい人々がいる。そこから膨大な数の少女が沿岸地域の工業地帯に流出して熱心に働き、狭い部屋に多人数で住み、お金を貯めて20才になる頃には戻っていく。地方では物価が安いので、貯蓄は商店の開業、住宅の増改築等に当てることができる。その結果工場では常に若年労働者が働いている。
従業員が数千人もいる工場の工場長は、多くの場合30才代のバリバリの技術者で、留学帰りか海外で研修を受けた人だ。彼らは競争が激しいので新しい生産技術を導入するために、頻繁に海外に出掛ける。
最近中国政府はハイテク企業の育成に力点を置いている。そのために、全国数十カ所に大規模なハイテクパークを建設し、進出企業に手厚い優遇措置を与えた。北京・中関村のハイテクパークは面積75平方キロという巨大な規模であり、すでに北京大学、清華大学等の一流大学、200を越える研究所、1万社近い企業・研究所が立地している。
WTO加盟でさらに企業進出
それらの企業には、ここで生まれた中国最大のパソコン・メーカー「聯想」がいる。またIBM等の海外一流企業の工場・研究所が多い。このハイテクパークのシリコンバレー事務所は40万人の留学生に対し、このパークでの起業や就業を働きかけている。
広東省の深圳市や東莞市には、台湾や日本を始めとする海外企業のIT部品工業が集中している。ここではパソコン部品の95%以上を1日で調達することが可能である上に、低賃金であるから、海外のIT企業の進出が続き、アジア最大のIT機器工業地帯に成長しつつある。
私は最近山東大学と浙江大学で学生に講義したが、日本の学生よりもはるかに行儀正しく熱心に聞き、答えに窮するような鋭い質問を次々に浴びせてきた。こうした能力あるエリート達が争うように海外の先端技術を吸収してハイテク産業の担い手になる。また貧困地帯から低賃金の若年労働力が雲霞のように工場へ集まってくる。中国のWTO加盟とともに、日本の企業をはじめとする外国企業はこの魅力に引かれて一層大規模に中国へ進出するだろう。
残念ながら、現在の日本には、壮大なビジョンをもった政府が存在できず、気力ある若者が少ない。もし中国政府が貧富の格差拡大を防止できれば、20年後の中国経済は日本経済を飲み込むほどに成長するだろう。