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12月24日
学問の過度な細分化
統一的原理追及は無理
学術研究では、専門分野が細分化の一途を辿り、学会の数は、1958年には626であったが、2007年にはに増加し、その後、さらに増えただろう。それは、分野を狭く決めて、事実を厳密に追求する専門主義が主流となった結果である。
専門化が進むと、それらを統合する原理や価値を求めたくなり、歴史的に多様な統一原理が創造されたが、それらはいずれも破綻してしまった。
例えばニュートンは400年前に、エネルギー不滅の法則によって、宇宙が時計仕掛けのように永遠に正確に動くことを証明した。ところが、現在の先端科学によると、宇宙のエネルギー全体の中で我々が知っているのはわずか5%にすぎず、70%は「ダークマター 」というエネルギーを持たない存在らしいと言われ、ニュートン理論は普遍性を失ったという。
宗教や思想では最近まで、世界ではアメリカの「自由・平等」思想が支配的だったが、アフガン・イラク戦争の失敗によって、その思想は世界に通用しないことが判った。マルクスは、社会主義の原理を発見したが、実際の社会主義国は市場原理導入によって発展している。
儒教では、自分の行いを正しくすれば、家庭の秩序が整い、さらに家庭の集合体である国家は、君主の支配によって自然と治まり、中華を中心とした世界秩序が形成されると考えられ、中国の歴史は、現在まで人権無視の独裁的政権が続いている。
イスラム教は、コーランの教えを守ることが、人間にとって最も重要な任務であり、ムハンマドが生きた中世の世界を維持しようと努めている。彼らは、部族を中心とした宗教共同体の中で生きているため、部族間の紛争が頻発し、アラブの春以降は国家が融解して内乱が治まらない。
私たちは、統一的な原理や基準を求めるのは無理であるから、取りあえず近似値を利用している。歩いている時、地球は平らな土地であるという近似値で判断し、また、経済学や工学では、ニュートン理論のうち、微分方程式を取り出し、そのまま利用している。
専門以外の知識に幅を
知識には多様性と階層性があり、人々はそれぞれ課題に応じて、利用できるレベルの知識を使っている。光が曲がるとか、「ダークマター」が存在するとかという問題は、専門家の仕事であって、普通の人とは無関係である。 私たちは、近似値によって生活しており、地面が平らであるのは、丸い大きな地球の近似値である。知識は階層的であって、専門家は狭い分野の奥を深め、他分野に関する多様な知識が、近似値であることを認識してその幅を広げるべきだろう。
そうすれば、 例えばイスラム教の宗教共同体や、儒教における家族の和にも学ぶべき点が多く、それぞれ現代社会で役立つ教訓を与えてくれる。
偉大な学者は、専門領域における深い学識と、それ以外の分野に関する独特な近似値体系を確立している。残念ながら、最近、専門マニアの学者が増えているように思われる。 それは学問の退歩につながる危険を持っている。