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12月22日
イラン経済封鎖は成功するか。
強引な欧米化策の弊害
中東では、アメリカの力がすっかり弱くなった。アメリカ軍のイラク撤退が終了し、アフガン撤兵が始った。戦争に勝てなかったのである。パキスタン政府はアメリカ軍の支援を中止した。米空軍の誤爆やオサマビンラディンの殺害等の主権侵害事件に怒ったのだ。「アラブの春」で生まれつつある政権は、いずれもイスラム政権であって反米的だ。
中東で最も反米的な國はイランである。それには充分な理由がある。60年前に反米のモサデク政権がCIAの力で倒された。パーレビー新政権はアメリカから膨大な武器援助を受け、強引に欧米化政策を実施した。テヘランではナイトクラブが栄え、男女が自由に交際して、反イスラム社会が広がった。
工業化の過程で貧富の差が拡大し、街には貧しい若者が溢れた。イスラム教では共同体のメンバーが挙って唯一の神・アラーを信じ、揃って日常生活の戒律を守れば、ともに天国に行ける。貧しい人はイスラム共同体の中で助け合い、男女がそれぞれ別社会に住み、幸せに生きていた。
庶民は偉大なイランをアメリカ的な堕落から救う道はイスラムの生活に戻ることだと考え、79年のホメーニ革命(宗教指導者による政権奪取)を熱烈に支持し、若者はアメリカ大使館を444日も占拠した。
アメリカはイランが反米の宗教国家に変質したことに驚き、隣国のフセイン政権に対して、巨額な武器援助を開始した。その結果、80年代にイラン・イラク戦争が発生し、血みどろの戦いが8年も続き、イラン経済はすっかり疲弊した。
幸いにも、最近の10年間で、中国経済の高成長に支えられて、原油価格は上昇した。イランは、原油輸出が伸び、順調な経済成長を始めた。そのため、巨額な資金を核開発に投入し、また濃縮工場を稼働することが出来た。イランの技術力から見て、ごく近い将来、原発、核兵器、ミサイルを完成し、中東の軍事大国になりそうだ。
9番目の核保有国に
ところで、中東の人はイスラエルを憎んでいる。それは、ヨーロッパ人がユダヤ人を差別・虐殺したという自らの負債を、アラブ人の土地をユダヤ人に与えることによって解決したからだ。その結果誕生したイスラエルの存在は認められないのである。
イランが核兵器を持てば、確実にイスラエルの生存が脅かされる。アメリカではユダヤ人資産家の政治家に対する寄付は巨額であって、政党の政策を左右している。アメリカの議員は、イランを傍観できない。
できれば、イラン経済を潰し、核開発の能力を奪いたい。ごく最近、経済封鎖を一層強化するため、世界のどの國もイランから石油を輸入できないようにする金融規制法案が両院を通過した。
イランは、多分、経済封鎖に伴う生活水準の低下に耐えつつ、中国、ロシア、インドに接近する戦略を練るだろう。アメリカは、この大きな賭に失敗して、イランが9番目の核兵器保有国になり、自らのプレゼンスを一層下げそうだ。