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9月24日
急務の銀行不良資産処理
構造改革の先送り論は誤り
小泉内閣の発足以来、景気は下降する一方だ。今年の4~6月の名目GNPは遂に実質で前期比マイナス0.8%(年率換算マイナス3.2%)に落ち込み、株価は暴落を続けている。不況が深刻になった直接的原因はアメリカにあって、小泉内閣の政策とは無関係だ。
アメリカではITバブルが崩壊したため、日本の電機機器(IT機器が中心)の輸出額は最近の半年間で30%も減った。日本を代表する大手電機企業はいずれも大規模なリストラを発表した。日本経済の景気回復をリードするのはIT産業のはずだったが、IT機器の輸出減少によって景気は失速状態になった。
そうしたときに、アメリカで同時多発テロが発生し、アメリカ国内には、新しいタイプの戦争が始まったという緊張が漲った。株価の暴落による個人の金融資産の目減りと、この緊張感によって、今後消費が大幅に減り、景気後退は加速しそうだ。日本の輸出はさらに減少するに違いない。
経済の構造改革をを唱える小泉内閣にとっては、不運な出来事が続いたものだ。世界同時不況を避けるために、政府は構造改革を先延ばしすべきだという意見があるが、それは誤りである。まず銀行の不良資産の処理を急ぐべきだ。
同時多発テロ発生の翌日、第一勧銀が追加融資を断ったためマイカルが倒産した。マイカルは民事再生法を申請した。このニュースが流れるや、株価が反転して一万円台に戻った。それは、本格的な不良資産処理が始まり、経済の先行きに明るさが見えそうだと市場が予想したからだ。
銀行は借入金を返せそうもない企業には、追加融資をストップすべきである。自信がある企業は民事再生法を申請するだろう。民事再生法は本来中小企業の再生のためにつくられたが、最近では「そごう」のような大企業が利用した。裁判所によって民事再生法の適応が認められれば、企業の銀行借入金は大部分が棒引きされる。「そごう」の場合には、借入金の約85%が棒引きされた。企業は身軽になり、非採算部門を売却して、経営資源を採算部門だけに集中して蘇ることができる。
3度目の公的資金が必要
経営者はやがて責任をとるだろうが、過半の従業員は残ることができる。全員が路頭に迷うわけではない。企業経営が軌道に乗ると、前向きな設備投資や雇用の拡大が始まるだろう。「そごう」は15%に減った借入金の大部分を返済した。店舗の約半分を売却した。売却店舗の一部は大型専門店に変わり、大勢のお客を集めている。
ところで、銀行が民事再生法などによって貸付債権の多くを失うと資本不足になり、長銀のように市場の攻撃を受けて倒産する可能性がある。大手銀行は過去90年間で59兆円の不良資産を処理した。その原資は主として業務利益と有価証券の売却益だった。しかし、現在銀行の不良資産は年間6兆円のスピードで膨張しているが、年間の業務利益は4兆円程度しかない。また株価が1万円になると、銀行の所有株式に含み損が生まれ、売却すると損失が発生する。つまり大手銀行は、17兆円の不良資産を短期間に処理できない。
銀行が、不良資産の処理を先送りすると、企業は巨大な借入金に押しつぶされたままであり、前向きな投資ができず、経済に活力が生まれない。3回目の大規模な公的資金の投入がどうしても必要だ。その際、銀行経営者の責任を追求すべきであるが、大蔵省や金融庁等の監督官庁が犯した過去の政策ミスについての責任をはっきりさせなければ、銀行経営者は口実を見つけて責任を逃れるだろう。