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9月25日
公務員制度の変革
経済統治できぬ官僚機構
日本経済は1980年代の中頃にバブルに巻き込まれ、90年代の始めから現在まで景気の低迷と金融不安に苦しみ続けている。
これに対して、アメリカ経済は80年代の前半には、バブル経済と金融不安に苦しんだが、90年に入る頃には見事に立ち直り、現在まで、長期の繁栄を享受している。
10年前には、日本はアメリカにとって覇権を脅かす危険な存在だった。ところが、現在では不合理な規制、情報の隠蔽、無駄な公共事情、談合が広く行われる遅れた国に過ぎない。対日貿易赤字が全赤字額に占めるウエイトはわずか20%に下がった。かっては日本がアメリカの国債を大量に購入していたが、いまやアメリカが日本の国債を大量に買っている。日本の代表的な産業である自動車産業では、大部分の大手企業は欧米企業の系列下に入った。
東アジア経済も見事な発展を続けた。3年前には、通貨危機に襲われたが、インドネシア以外の国は、それを克服して再び高成長を開始した。韓国、台湾は情報産業を始めとするハイテク産業で日本に追いつく強国になり、インターネットの普及率は日本を抜いた。中国は繊維、家電、雑貨等の産業では、強力な競争力を備えるようになった。
日本経済衰退の原因は明らかに政策の失敗にあった。政府は80年代中頃、円高を恐れて金融緩和政策を長期間続けたため、バブル経済が発生した。 土地政策が無策だったため、バブルは極端に膨れ上がった。慌てふためいて、金融を引き締め過ぎて、深刻なデフレを起こしてしまった。景気が完全に回復しないのに、97年から財政再建に着手したため、デフレスパイラルが拡大した。
バブルの崩壊とともに、金融機関に膨大な不良資産が発生した。金融危機の時には、どの工業国でも大銀行に対して経営者の責任を厳しく追及すると同時に、膨大な公的資金を投入して金融不安を払拭し、デフレの拡大を防ぐという政策を実施するものだ。ところが、日本政府は金融機関と深い関係にあったため、不良資産問題を先送りするという政策を採った結果、深刻な不況が長引いた。
政府と国会は、こうした失敗から今の官僚機構には巨大になった日本経済を統治する能力がないことを認識した。そのため中央官庁の再編統合の他に、公務員制度の変革が開始された。キャリアーの役人が2年間ぐらいでポストが移動する慣行のもとでは、専門知識を修得できない上に、政策の責任がはっきりしない。ローテーションの期間を長期化して専門家を育て、また、民間や学界から専門家を引き抜き、高待遇で働けるようになった。
権限の大幅な地方移譲
公共事業等については、省庁内にコストと成果の評価を行う組織をつくりつつある。そのための専門家の雇用やアウトソーシングが必要になるだろう。それによって無駄な支出・プロジェクト・規制等が防げる。また厳しい人事考課制度をつくることになった。所得や昇進にはっきりした差が出るから、効率的に働くようになるだろう。天下り先を防ぐために定年を延長して老後を保障することも重要だ。
日本経済は大きくなり過ぎたので、霞ヶ関の約2万人のキャリアー役人では統治できなくなった。行政を効率化し、また行政サービスの質を向上させるためには、権限の大幅な地方移転が必要である。 こうした改革に対して消極的な意見もある。民間は優れた人材を役所に渡さないだろう。実効性ある政策を企画できる学者は少ない。行政の評価を役所に委せると客観性を欠くが、外部には人材不足だ。地方自治体に権限を委譲しても、自治体には権限を有効に実施する。力が欠けて
いる。しかし、権限を与えれば人材は育つものだ。
学界の先生も永遠に権限を持たないだろうから無責任な発言をする。役所に勤め、権限を与えられるという展望が得られれば、現実的な考え方になり、素晴らしい企画を創造するだろう。自治体もそうである。一刻も早くこうした公務員制度を改革すべきである。