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3月2日
米国の株式経済と景気動向
悪循環の力が働く
アメリカの「株式経済」には、一旦、景気に浮揚力がつくと、その力はますます強まり、逆に、いったん景気に下降力が加わると、ますます下降する力が強まるという性質がある。アメリカでは個人の金融資産の60%以上が株式であるから、景気が拡大して株価が上昇すると、個人の金融資産が膨張し、購買力が拡大する。
株価が高くなると、ベンチャー・ビジネスを起こして、株式を上場し、巨万の富を得る人が多くなる。また経営者や従業員は給与の一部をストック・オプションで貰うので、株価がある水準以上に上昇すると、膨大な所得が得られる。こうした結果、個人消費が膨張し、また起業が増大して、景気と株価ははスパイラルに上昇する。
IT(情報技術)革命は、好景気の時に効果が大きくなる。アメリカでは、日本と違って、質の悪い労働力の厚い層がある。景気上昇にともなって労働力需要が増大すると、彼らも雇用される。幸いなことに、ITによって、単純な労働は自動化されると、ミスが減り、また仕事が速くなり、生産性が上昇する。
ところが、景気が下降し始めるとともに悪循環が始まる。株価が低下し、個人の金融資産が目減りして、購買力が縮小する。またストックオプションが与えられていても、株価が低いので、全く利益が得られない。個人消費が激減し、景気がさらに悪化し、株価はもっと下がる。
個人や企業の所得が減ると、投機的資金が集まらず、キャピタルゲインを狙った起業が難しくなる。地価の上昇によって、事務所や住宅の費用が高くなり、その分だけ物件費や人件費が増大するので、新企業は採算を取りにくい。起業が減ると、経済の活力が失われ、IT革命の効果が現れない。
アメリカ経済が高成長をとげていた時には輸入が拡大するから、東アジア諸国を始めとして、対米輸出の増加によって発展できた。しかし、アメリカの景気が下降すると、輸入が減り、東アジア諸国を始めとして、対米輸出に依存している国は大打撃を受ける。
アメリカ経済は過去8年間高成長を続け、株価は上昇を続けた。ところが、昨年の中頃から、株価が下降し始めるや否や、悪循環の力が強烈に働き、直ぐにIT関係の株価が暴落し、続いて個人消費が減り、自動車産業等の大産業では売り上げが減退して、大規模なレイオフが続いている。
企業危機再発の可能性
半年先には、アメリカ経済は景気回復期に入るという楽観論がある。それは現在の金利水準が高く、また財政も大幅な黒字であるから、今後金利を3%ぐらいは引き下げることが出来るし、さらに15兆円ぐらいの減税を続けられるからだ。
しかし、今回はITブームや株価ブームに支えられたバブル景気からの転落であるから、景気を引き下げる慣性は大きい。今までの景気の山が高かったから、これから転落する谷は当然深くなるはずだ。日本の株価はアメリカの株価低下に引っ張られて暴落して、金融機関では株式の含み損が発生した。地価が下がったので、不良資産は増えた。そのため金融危機が再発する可能性は大きい。アメリカ経済と日本経済が悪化すれば、東アジア諸国の経済が深刻な状態になり、政治的混乱が一層激しくなる。
このような危機に直面して、日銀は危ない銀行に対して資金を供給し続ける決意をしたが、内外経済の悪さを考えると、郵貯・年金などの株式運用の弾力化といった思い切った株価対策が必要だ。