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8月12日
ゼロ金利政策の解除
消費者物価を下げた原因
景気は底堅くなってきた。製造業では、生産が年率7%も伸びているのに、在庫が減っている。それは需要が着実に上昇しているからだ。非製造業では、製造業ほど好調ではないが、売り上げはプラスに転じた。消費者物価ともに低下しているので、デフレ経済が続いているように見えるが、これはコスト低下による「良い物価低下」であるから心配無用だ。地価が低下したので、家電専門店等の大型専門店が大都会の中心部に進出し、低コストの販売店が多くなった。また、医薬品や化粧品等は規制が緩和され、販売効率が良いディスカウンター等で販売される量が増えた。
さらに、中国経済が目覚ましい発展を続け、廉価で良質な衣料品などが大量に輸入され、大型店で販売されるようになった。最後にIT革命の結果、代理店を通さない取引が増えた。これらの要因が消費者物価を押し下げた。 物価が低下したので、私たちの生活は、所得が増えないが、むしろ楽になった。なにしろ、地価が下がったので、住宅価格が安くなった。今から10年前には年所得の8倍出しても、狭い家しか買えなかったが、現在では4倍出せば、いくらか大きな家を買えるようになった。家賃も大幅に下がった。
サービス料金も安くなった。かっては、同窓会は1万円が相場であったが、現在は6000円ぐらいに下がった。海外旅行は安くなり、有名観光地の一流ホテルは初老の日本人観光客で溢れている。海外旅行との競争に勝つために、国内旅行も驚くほど安くなった。国民は消費支出を増やさなくても充分楽しい生活ができる。
企業はリストラに努力し、不用な資産を売却し、非採算部門を閉鎖し、設備投資を押さえ、人件費を減らした。不動産、デパート・スーパー、建設業、金融業等では泥沼にはまり込んだ状態の企業が少なくないが、多くの産業では、リストラの成果が現れ、利益率が目立って向上した。それに伴って、設備投資が増大している。自己資金が豊富になったので、設備投資を拡大しても、経営的な負担にならない。
また、iモードやパソコンのの需要が急増し、半導体を始めとする関連部品が供給不足の状態にある。ITを利用する産業も、IT関連製品を生産いている産業も、設備投資が増大している。企業の設備投資が増大すると、機械設備産業の生産が活発になり、それは次第に、生産財産業に普及し、すでに、製造業全体の生産は急ピッチで増大している。それと同時に雇用やボーナスがいくらか増えた。
”普通の経済”への回帰
しかし、賃金水準は企業収益に比較して考えると、まだ賃金水準は高すぎる。そのため、企業の成長力はかなり弱い。企業が欧米企業並の力を備えるためには、2~3年間ぐらい賃金上昇を抑える必要がある。当分の間、賃金は上昇しないと予想される。幸いにも、物価が下がっているので、生活が苦しくなるわけではない。
政府は消費者物価が下がり、個人消費が伸びないので、ゼロ金利政策を継続して、経済を下支えする必要があると判断しているようだが、景気は明らかに回復に向かっている。そごう倒産のような大事件が発生しても、金融不安は発生しなかったのは、景気が底堅くなったからだといえよう。
日銀は短期金利を僅かに引き上げてゼロ金利政策を中止した。ゼロ金利政策の継続の可否について、ジャーナリズムでも広く議論されているので、市場はゼロ金利政策が中止になっても、殆ど驚かず、ショックを軽く吸収できると思われる。建設業株が急落したり、業績が悪い銀行の預金が急減しすることはない。
景気が回復に向かっているので、構造不況業種をゼロ金利によって救う必要はない。金利機能が働く普通の経済に戻る時期になった。