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3月16日

ガケっぷちの日本経済

IT投資で企業合理化

日本経済はいよいよガケっぷちまで追い込まれた。一刻も早く、日本経済に溜まっている膿を出し、企業が自由に活動できるような環境を整えなければならない。誰でもこのことを知っているが、それを実施するとき、発生するだろう大量の出血を恐れて、ずっと避けてきた。

銀行は依然として膨大な不良資産を抱え、経済活動の血液といえる資金を潤沢に供給する能力を失った。悪いことに、最近の地価の下落と株価の暴落によって、銀行の不良資産はさらに増えた。銀行が立ち直るためには、不良資産を直接償却して、一挙に膿を出すことが必要だ。

ところが、不良資産を直接償却すると、かなりの銀行は赤字決算を続け、また資本不足に落ち込む可能性がある。来年4月から、1000万円以上の預金は保証されない。大口預金者はそういう危ない銀行から預金を移動するので、金融危機が発生するかもしれない。

また不良資産の直接償却は、借入金を返済できない企業に倒産を宣言することを意味している。幾つかの企業が倒産すると、関連企業が連鎖倒産する可能性がある。大手企業が倒産すると、連鎖倒産の規模が大きくなる。不良資産の直接償却が進むとともに、担保に入っている多くの土地が売却されるから、地価が一層下がり、銀行の不良資産がさらに膨張する可能性がある。また失業者数が増大して、個人消費は減少し、経済はスパイラルな下降過程に落ち込むだろう。

これを防ぐためには、投資を刺激することが必要だ。幸いにも、企業はIT関連設備に対して強い投資意欲を持っている。しかしIT投資が最も効果を上げているのは企業活動の合理化だ。

例えば、企業はIT技術を利用して、販売店の売り上げデーターと工場の生産データーとを常に統一的に把握し、最終の販売動向に合わせて生産し、製品は工場から販売店に直送される。これによって、在庫と倉庫が減り、在庫資金が減少し、卸売りが中抜きされる。それと同時に過剰になった従業員が整理される。つまりIT投資は、失業を増大させるという機能を持っている。

国家システム再検討必要

このままの状態で、日本経済から膿を取り去り、また投資を刺激すると、直ちに深刻な失業問題が発生する可能性が大きい。しかしITによって、生産が効率化すれば、物価が下がり、国民の生活がそれだけ楽になるから、新しい消費が伸びるはずだ。例えば生活のIT化が始まり、携帯電話を使って、自宅の風呂や炊飯器に点火するようになる。またデジタル・テレビが急速に伸びるだろう。

もし、倒産した企業の従業員や、IT投資によって過剰になった従業員が、IT関連の技術を身につけていれば、このような新たに需要が増加する産業で働けるはずだ。若年層、高年齢層とも失業者が激増しているが、人手不足に苦しんでいる分野もある。例えばコンピューター・プログラマーやコンピューター・ソフトの制作者は非常に不足しており、引っ張りだこだ。

しかし、現在の教育システムは、経済や社会が必要とする人材を育成してくれない。また社会人を再教育するシステムもない。多くの大学では実用に役立たない古い知識を教えるだけだ。どうも日本経済の問題は、経済以外のところにもあるように思われる。国家のシステム全体の再検討が必要だ。

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