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5月13日
政治主導型に変った霞ヶ関
日本を統治してきた官僚
日本は昨年まで官僚国家であり、官僚が重要な政策をすべて決めていた。そのやり方はつぎのようだ。ある省が新しい政策を策定するときには、まず特別な委員会をつくり、衆知を集め、かつ世論に耳を傾けたような形式をとるが、委員には反政府的な見解を持つ人はほとんど選ばれない。委員会では、官僚は豊富な資料によって蕩々と説明し、質問や反論には柔らかに答え、予め決まっている結論にリードしていく。
その省はこの結論を受けた形で新しい法案をつくる。省の幹部は反対が起きないように関係団体、関係省庁、有力政治家に根回しする。法案はまず官僚のトップが集まる事務次官会議にかけられ、全員の同意を得た後、閣議にかけられる。幹部は法案の国会通過を目指して、事前に与野党の関連部会や関係議員に説明して廻る。
このようにして、官僚が中心になって新政策の基本となる法案がつくられる。また官僚は多くの許認可権を握っているので、それを通して、細かく日本を統治してきた。
総理は閣議の司会者に過ぎず、発議権がない。法案は総理が賛成しても、閣僚が一人でも反対したら流れてしまう。閣議で激しい議論が戦わされるわけではない。多くの閣僚は派閥内の順送りで任命され、担当省庁の仕事をまるで知らない。官僚は思うように日本を動かせる。
総理の政策ブレインである首相補佐官は官僚である。森総理がえひめ丸事件を知ったとき、「官邸に帰っても仕方がない」とゴルフを続けた。総理の実質的権限の狭さや、増えたと云ってもたった5人の補佐官体制から考えると、それは正直な感じだろう。
最近15年間では、官僚主導型の政治は失敗の連続であって、ついに日本経済を崩壊寸前の状態に追い込んでしまった。森内閣の時、省庁が再編成され、大臣、副大臣、政務官で合計60人以上の政治家が霞ヶ関に送られ、政治主導型の体制に変った。政治家が政策の基本的な考え方を決め、官僚に指示することになった。副大臣や政務次官が官僚に代わって、与野党、関係団体、関係省庁等への根回し役になる。国会では政治家が答弁することになった。
政治家に厳しい規制必要
小泉総理は派閥の領袖に相談なく閣僚を任命したので、総理が閣僚を指揮する力は今までになく強くなったはずだ。また総理は基本的な政策を考える時には内閣府を動員できる。内閣府には、総理の指揮下に、重要問題を担当する大臣を3人もおけるようになった。学者や民間人を重要ポストに登用できる。経済政策の基本を決める経済財政諮問会議の議長は総理であり、担当大臣には経済学者の竹中氏が就任した。総理を支える霞ヶ関の力は非常に強くなった。
森内閣によって政治主導の体制が出来上がり、小泉内閣になって総理主導の体制になったといえる。今まで、日本の首相の地位はどの国よりも弱かったが、この欠陥はかなり克服されそうだ。
ところで、政治主導になった時に、もっとも恐れられるのは、政治家が政治資金を稼ぎ出すために所管の企業・団体と癒着し、腐敗することである。それを防ぐために、大臣は勿論、副大臣や政務官も公務員と同じように、所管の企業・団体から接待、贈り物、献金等を受けないこと、また退職後には所管の企業・団体に勤めないこと等の厳しい規制が必要だ。また政治主導のもとでは、専ら二世議員が日本を動かす恐れがある。