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9月3日
新生銀行と貸付債権放棄
救済に協力する必要はない
第一勧銀、三菱信託、新生、日債銀の主要取引銀行四行は準大手ゼネコンのハザマに対して、1,050億円の貸付債権を放棄することを決めた。メインバンクの第一勧銀が金融機関の貸付債権放棄を軸にしたハザマの再建計画を建てた。貸付債権の放棄率は第一勧銀は50%、準メインの三菱信託は40%、新生は35%、日債銀は25%と、ハザマの経営にに対する影響力が大きい銀行ほど放棄率が高くなるように決められた。
債権の一部放棄によってハザマをを救済できれば、金融機関の損失はかなり少なくてすむ。それには、ハザマには沢山の金融機関が融資しているので、すべての金融機関が再建計画を承認して、応分の債権放棄を決意し、かつ今後も融資を継続することが必要だ。ところが、問題は新生銀行である。新生銀行はそごうの準メインバンクであったにも拘わらず、債権放棄を拒否したため、そごうは倒産してしまった。
新生銀行にとっては、ハザマも、そごうの場合と同じように倒産させた方が得策である。というのは、長銀を買収するとき、金融再生委員会と「瑕疵担保条項」を結び、貸付債権が2割以上減価したときには、その債権を政府に売却できるからだ。ハザマが倒産すれば、貸付債権430億円の全額を政府に売却できるから損失が発生しない。債権の一部を放棄して、ハザマの救済に協力する必要は全くない。
ところが、ハザマの救済のためには、どうしても準メインの新生銀行が債権放棄を行い、主要取引銀行の足並みが揃うことが必要だ。そこでかなり無理して新生銀行が貸付債権のうち150億円の放棄に応じられる条件がつくられた。そもそも新生銀行はハザマへの貸付債権430億円に関して、金融再生委員会から貸し倒れ引当金として200億円を譲与されているので、50億円の貸付債権を放棄しても、損失が発生しないのである。
しかし、ハザマが再建に失敗したときには、放棄しなかった貸付債権280億円が返却されない危険性がある。新生銀行はこの損失の発生を恐れて、債権放棄には応じなかった。そこで、第一勧銀と三菱信託がこの280億円の貸付債権を230億円の割引価格で買うことにした。割引された50億円については、金再生委員会から譲渡された貸し倒れ引当金のうち50億円が残っているので、それを充当すれば、新生銀行の腹は少しも痛まない。第一勧銀と三菱信託にとっても、この価格なら再建失敗のリスクをカバーできるので、悪い取引ではない。
日本政府のまずい取引
4兆円近くの巨額な税金を投入して、長銀を最終的に新生銀行に売却した理由は、長銀の取引先企業に融資を続け、倒産を防ぐことだった。ところが、新生銀行は金融再生委員会と「瑕疵担保条項」を結んでいるので、経営危機にある取引先企業に対して債権放棄や追加融資を全く行わず、幾つかの企業を倒産に追い込み、また危ない企業から資金を回収した。
新生銀行は外資系銀行だから、高利益と優良な財務内容こそ信用の源泉だと確信し、取引先企業の倒産を平然と見送るという経営を続けている。その結果、日本では不良資産が最も少ない飛び抜けた優良銀行になった。これからは、貸付債権の証券化、不動産の証券化、企業合併の仲介など、アメリカ的投資銀行を目指すようだ。
新生銀行が順調に成長し、株式を上場するようになれば、株価総額は直ぐ1兆円ぐらいになるだろう。そうなればアメリカのリップルウッド社を中心とする投資グループは、長銀をを1000億強の資金で買収し、1兆円ぐらいの利益を上げることになる。
日本政府はまずい取引をしたものだ。アメリカの投資銀行は実に巧妙であり、日本政府は手もなく捻られてしまった。新生銀行はこれからも、ハザマと同じやり方で、債権放棄を行い、新生銀行だけが損害をゼロに済ませるだろう。熊谷組が2番目の例になるらしい