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12月20日
安倍内閣の対中政策に懸念
尖閣「棚上げ」破った中国
自民党は、2005年の「郵政選挙」や09年の「自民打倒選挙」の時のようなフィーバーなしに、また未曾有の低投票率の下で、圧倒的な勝利を収めた。民意は、民主党に愛想を尽かし、安定感のあるエネルギー対策とはっきりした景気対策を掲げた自民党に傾いた。
また、尖閣問題が日本人のナショナリズムを刺激しており、それがタカ派の安部総裁を持つ自民党に有利に働いただろう。しかし、それと同時に、安倍内閣が国民の支持を背景として、強気な対中政策を実施するかもしれないという、新たな心配も生まれた。
尖閣諸島の領有問題については、72年の田中・周恩来会談によって、「棚上げ」が決まり、78年に鄧小平によって確認された。「棚上げ」とは、それぞれが自らの立場を主張するのは自由であるが、その主張の受け入れを相手に迫らないことと、現状が不満だからといって、それを一方的に変更しようとしないことである。(田中・周会談の時、事務局を勤めた栗山尚一氏による)
この「棚上げ」を始めに破ったのは、中国である。92年に「中国領海法」を制定して、尖閣諸島を中国の領海に含め、08年頃から、中国漁船が尖閣領域への侵入を繰り返した。
日本は、今年になって野田首相が尖閣を国有化し、これに対して、中国は、大型な反日デモを起こし、海や空から尖閣の領域に侵犯し、国際社会に対して、尖閣諸島は日本領ではなく、領有が紛争中の島であることを示した。今後、長い時間をかけて、実効支配することを狙っている。
中国は人口が多いから資源不足国であり、経済成長に必要な海外資源を確保するため、まず黄海から東シナ海・南シナ海に至る大陸棚資源の排他的開発権を握る。また中東・アフリカから資源を本国へ安全輸送するルートをつくる。そのために、この広大な海域を勢力下に置こうとしている。つぎに制海権を西太平洋やインド洋へと伸ばすつもりだ。そのためには、台湾を併合し、尖閣諸島を制覇して、大洋への進出口を広げる必要がある。
厚みのある交流継続を
中国は、過去、若年労働人口の増加に支えられて高成長を続けてきたが、一人っ子政策の影響によって、今や労働力が高齢化し、15年から労働力は減少に転ずる。20~30年先から、低成長と福祉負担の増大に苦しむに違いない。中国はその準備のためにも、現在の経済成長率を高めて、高齢社会に必要なインフラを充実しなければならない。
中国は、本気になって尖閣領有を狙っている。日本は、真正面から衝突すると、中国市場から閉め出されて、大きな経済的損失を被る。残念ながら、中国の日本への経済依存度が低下しているので、衝突による中国の経済的損失は、日本より遙かに少ないから、いくらでも強気になれる。
日本は、「棚上げ」の約束を主張して、実効支配を守ると同時に、粘り強く、厚みのある人的・文化的交流を続け、中国の国民から信頼を得ることが必要だ。先方の嫌がる首相の靖国参拝のようなことは、やめた方がいい。