静岡新聞論壇

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7月8日

特殊法人の問題点

インドネシアに類似点

日本とインドネシアには似ている点がある。インドネシアでは、どの役所もいろいろな産業で、大規模なサイドビジネスに精を出して、膨大な利益をあげている。また、役人は絶えずピンハネや賄賂によって収入を得ている。それらの利益や収入は、役所ごとに設けられた協同組合のような組織に集められて、役人の給与や役所の一般経費に使われている。例えば、軍隊はそれによって武器を買っている。

インドネシアは建国間もない頃には、国民が貧しかった上に、政府は金持ちの所得を捕捉出来なっかたので、税収が全く不足し、役人は給与が低く生活できなかった。そこで役人は、サイドビジネスを開拓して、自ら必要な資金を調達した。

役所は権力を利用してサイドビジネスを行ったので、高い利益を挙げ、財政基盤が強固になった。それとともに、役所の発言力が強まり、実力政治家は役所に接近し、サイドビジネスを公然と支持した。インドネシア経済が成長し、税収が増加しても、この悪い慣行は続いた。

政府は、いろいろな役所の利益を尊重しなければならなかったので、整合性のある政策を実施できなかった。また、役所のトップがサイドビジネス・ピンハネ・賄賂に精を出すと、部下はそれを見習うので、インドネシアは汚職国家から抜け出せない。

同じような問題が日本にもある。その一例は特殊法人だ。特殊法人は、国民経済に必要な大型事業を、主として財政投融資資金を使って実施する国営企業だ。日本経済が欧米諸国へのキャッチアップに努力していた時期に、国家的に必要だが民間企業の手に余るような事業が、特殊法よって進められてきた。

特殊法人は巨大事業を実施するので、膨大な数の下請け・関連企業が生まれる。例えば、道路公団では、高速道路の建設、維持補修、サービスエリアのレストラン、ガソリンスタンド等、多種な分野で膨大な数の企業と深い関係を持っている。

工学の学者が多いはずだった。しかし、彼等は大規模な原子力事故という総合的判断力を必要とするケースを研究しなかったので、彼等 の原子力工学の知識では始めての大事故に歯が立たなかった。そもそも、政府や東電には大事故を総合的に把握できる組織もマンパワーも欠けており、政府も東 電も重要な情報を公表しなかったので、学者は発電炉の原理や安全装置を説明するに止まった。

事態は悪化し、彼等が安全だと強調すればするほど、安全でないと思う人が増えた。優れた専門家でも、多様な要因が複雑に働いている大事故の行方を予想するのは無理だった。
関西電力の大飯原発3、4号基の再稼働の問題でも、総合的判断力が要求されている。政府や関電は、防波堤を高くする等の補強対策を実施すれば、大震災や大津波にも安全だという。

天下り・・・経済効率を低下

どの役所でも、ピラミッド型の人的構成を築くために、大部分の役人は若くして退職しなければならないので、当然、第二、第三の職場が必要になる。特殊法人は絶好の天下り先であり、道路公団の例で云えば、国土交通省のOB等が道路公団のトップや役員に座り、下請け・関連企業等のトップや役員には、道路公団のOBが天下るのである。日本経済は発展し、今や成熟段階に達したので、ほとんど全ての特殊法人は不必要になった。しかし特殊法人を廃止すると、役人は天下り先を失い、特殊法人の下請け・関連企業の従業員は失業する。彼らの数は多いので族議員を国会に送り込んで、存続の必要性を強調して無駄な事業を続けてきた。

特殊法人は明らかに、インドネシアと同じような役所のサイドビジネスであり、日本経済の効率を低下させた。中央官庁が多数の特殊法人をつくると、地方自治体はそれを見習い、国中に効率が悪い特殊法人が溢れている。

日本の役所にも、ピンハネや賄賂の慣行がある。公共事業を例にとれば、役所はかなり高い価格で公示を発注している。それによって国民の税金がピンハネされ、土木建設業者に手渡され、政治家の選挙地盤に恵みを与え、同時に役人の天下り先を確保していると云える。賄賂の事件はしばしば新聞で伝えられている。日本のシステムは、いつの間にか発展途上国並に落ちた。経済低迷が長引くのは当然だ。

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