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12月6日
農業発展のチャンスが奪われる
国際競争力を備えるには
中国の沿岸地方では、高所得層が8000万世帯を超え、海外旅行を楽しんでいる。最近、日本への中国人旅行者には炊飯器とコメを買う人が増えた。富裕層は日本製炊飯器で炊きたてのジャポニカ米を食べたいそうだ。中国では、国産のジャポニカ米が供給不足になり、価格が暴騰し続けている。日本との価格差は1表当たりで3000円に縮り、日本産の美味いコメに輸出の展望が開けてきた。
中国旅行者は、日本の梨、桃、林檎等の果物が大変好きであって、土産にしたいという。中国経済は今後高度成長を続けるだろうから、ジャポニカ米、高級果物、安全な野菜の需要が拡大し、価格が上昇するだろう。また世界では日本食ブームが続いている。良質な日本の農産品にとっては理想的な国際環境になった。
しかし、中国では、技術進歩が急ピッチであって、大部分の製造業品と同じように、高級なコメ・果物・野菜について追いつき、短期間で良質な産品を生産するだろう。アメリカでは、高品質なジャポニカ米が低価格で生産され、中国市場を狙っている。
日本農業がこの機会を捉えて国際競争力を備えるには、まず本格的な農業企業家の出現と耕作面積の拡大が必要だ。ところが、肝心のコメ農業では80%の農家は高齢者か兼業農家の片手間仕事であって、到底強力なコメ農業を創れない。
最近、専業農業者になりたいという若者が増えた。彼等の中には、中小企業経営のノウハウを習得し、また中国を始めとする海外市場に拘わる知識や人的コネを持っている人が少なくない。しかし、農業に参入するには、かなりの資金が必要であるが、融資をする金融機関がない。また一般企業は農業に参入できない。
結局、農家の子弟だけが農業を経営し、農業は「農家集団」の独占物になっている。2次大戦前には、大部分の農家は小作人であって、悲惨な生活を送った。農林官僚はヒューマニズムに燃え、戦後、農業の生産性の上昇と農家の生活向上に全力を注いだ
農林官僚は農地改良のために巨額な国家資金を投入し続けた。彼等は、その過程で、日本の全水田をコントロールし、かつ全農家を囲い込んで保護する権利と義務を担っていると錯覚した。
そのまま残る大きな弱点
そこで、非農業者は農業に参入できない制度をつくり、また米価を高く維持し、減反手当を与え、輸入を制限して、農家の生活と自分たちの権限や天下り先を守った。
民主党政府は、コメ農家に対して所得保障という「ばらまき制度」を創設した。その結果、零細な耕地、年配農家、サラリーマンの兼業農家という日本農業の大きな弱点がそのまま残り、多くの兼業農家は普通のサラリーマンより所得が高くなった。
その結果、やる気のある農家の規模拡大が一段と難しくなった。また一般企業が農業に参入すれば、コメと輪作による多様な農産物の生産、加工、流通、観光業にも取り組むから、強い農業が生まれるはずであるが、それは禁止されている。こうして、農業の活力が一層失われた。
世界では、2国間、多国間で、いろいろな関税引き下げ協定が結ばれている。もし、日本が協定に加盟していなければ、加盟国は日本の工業製品に高い関税をかけてくる。日本の製造業はすっかり弱くなって、新興国との輸出競争に敗れており、その上関税格差が生まれれば、日本経済は衰退の一途を辿りそうだ。
農水省と族議員は一体となって農業から成長力を奪い、かつ農産物に対する関税を引き下げる関税協定に反対し、農業に対する支配力と選挙の票田を守ろうとしている。これは日本国家の融解を示す代表例である。