静岡新聞論壇

2003年 

犯罪減へ総合的な政策

国内の事件も防げぬ政府

犯罪が恐ろしいスピードで伸びている。犯罪件数は最近5年間で50%以上も増え、凶悪犯罪件数は2倍近くなった。これに対して、検挙率は、凶悪犯罪で、40%から20%に下がった。この長期不況の中で、防犯機器のメーカーや警備会社は目覚ましい業績を揚げている。国家の最大の役割は、国民の安全を守ることであるが、政府は北朝鮮の拉致だけではなく、国内の凶悪犯罪も防げない。日本は、経済も、国家機能も崩壊してきた。

そもそも警官が不足している。週休2日制になり、また休日が増え、警察官もそれに応じて休む。警察官数を増やさなければ、警備は手薄になる。犯罪が増えると、警官が忙しくなるから、犯罪が一層増えるという悪循環が始まっている。防犯のために、自警団を組織している町内会が増えてきた。

高速道路の拡充よりも、警官増員の方が重要だろう。また警官が駐在している交番が足りない。これから、警官がいない交番は広めに、かつ明るくし、そこに、近所の警官・自衛隊・企業の退職者が数人集まり、深夜までお茶を飲んでいれば、それだけでも、防犯効果があるだろう。コストは非常に低い。

小学生に対する防犯として、学校の塀を高くし、校門に自動扉を備え、先生が時々巡回するという対策が広がっている。逆に、校門も塀も取り払い、近所の住民や父兄が自由に校庭を歩けるようにしたならば、自然に監視が行き届き、防犯になるだろう。学校を塀や自動扉で固め、閉鎖的な空間を作ると、かえって危険かもしれない。学校はどちらの方法も自由に採れるようにして、結果を研究するという弾力的な姿勢が望ましい。 退職者交番が近くにあれば安全性が高まるだろう。

最も重要なのは、コミュニティーを再建することだ。近所の人がお互いに顔をよく知っていれば、不審な人物を認識しやすい。また、ニューヨーク市で成功したように、駐車違反を厳しく取り締まるといった細かい努力も必要だ。違法駐車の車には、盗難車があるので、犯人の手がかりを得やすい。道路がすっきりして、犯人の目撃者が増える。検挙率が高まれば、犯罪は採算に乗らなくなる。

日本国籍取得のチャンスを

外国人の犯罪についてはつぎのように考える。まず、日本国籍を取り易くする。新日本人は、日本人と同じように、就職できるだけではなく、幹部職員やトップにまで昇進できるという展望を与える。希望があれば、刹那的に生きるという姿勢が改まるだろう。国籍を獲得するためには、例えば、日本に5年間生活し、真面目に働き、犯罪に全く拘わらなかったという条件が必要だ。

イラク戦争ではアフリカ系やヒスパニック系のアメリカ兵が先頭になって戦い、彼等が戦死者の8割を占めたという。彼等はアメリカにおける社会的地位を向上させるために戦った。日本人になれる可能性が見えれば、犯罪に走ったり、協力したりする外国人は少なくなるだろう。日本は国際化する一方であり、また少子化傾向が進んでいるので、国籍を与える問題についても、真剣に検討すべきである。新日本人の警察官も必要になる。

自治体病院に精神科を増やすことも重要だ。精神科は診療時間が長い割に、診察料が低く、採算が悪いので、病人の数に比較して精神病医が少ない。また少年・児童専門の精神科医はほとんどいない。精神科医を増やすだけではなく、例えば、退院後3週間以内に、病人が凶悪犯罪を犯した時には、担当精神病医に対して退院の説明責任を求めるといった制度が必要だろう。

国や自治体は、次年度までに犯罪率を10%減らすというような目標を立て、いろいろな部門に散らばっている政策手段を総合的に動員すべきだろう。日本国家の危機が高まってきたように思える。

ページのトップへ