静岡新聞論壇

2003年 

韓国の対日感情

文化通じ好意的若者 

加害者は忘れやすい。私たち日本人にとっては、韓国を植民地にし、韓国語を禁止し、苗字や名前を日本式に変えさせたことは、遠い昔のことになり、忘れがちだ。被害者は決して忘れない。韓国の老人はかって屈辱の日々を送った。中年の人は日本人の横暴を両親や先生から絶えず聞かされた。彼等の多くは、現在でも強い反日感情を抱いている。

サムソン研究所のアンケート調査によると、40歳以上の人に嫌いな国を尋ねると、日本、北朝鮮、中国、アメリカの順である。北朝鮮と中国は、約50年前の朝鮮戦争で血みどろの戦いをした敵国であり、アメリカはその時の味方だった。これは予想された通りの回答だ。 これに対して、20歳代の回答では、アメリカ、北朝鮮、中国、日本の順である。日本が最後にくるとは予想外であり、アンケートの仕方が正しかったかという疑問を抱かせるが、私の友人の韓国人によると、驚くような結果ではないという。何故日本が嫌われなくなったか。第1の理由はワールドカップの協賛であり、その時、2次大戦後、始めて若者達がお互いに相手国ティームを応援したことだ。

第2に韓国では、日本のアニメ、Jポップス、映画、ファッションのファンが激増し、同時に、日本でも韓国の映画、歌曲、ファッションが人気を集め、韓国人アーティストが活躍している。両国の若者達は、過去に拘泥せずに、草の根の文化的な交流を深めている。第3に、韓国経済が強力になり、鉄鋼、半導体、液晶などで、日本企業に競り勝ち、日本コンプレックスが消えたことだ。優位な立場に立てば、相手を許せる。

韓国政府は、つい最近まで、日本の文化が流入して、文化的な植民地になることを恐れて、日本映画や日本語の歌曲の輸入や、日本語のラジオ・テレビの視聴を禁止した。また、映画産業に補助金を支給し、欧米映画の輸入制限を続けて、韓国固有の大衆文化を育成した。その結果、韓国映画の水準が目覚ましく向上し、日本でも大ヒットするようになった。日本から韓国へ、韓国から日本へ、それぞれ毎日1万人の旅行者が行き来している。ごく自然に両国の文化が相互に浸透した。韓国の若者はキムチやニンニクをあまり食べなくなり、日本の若者がキムチをまるで日本食の一部のように食べるようになった。韓国政府は、自信がついたので、日本文化の輸入制限を大幅に緩和した。

米国式経済への反発

これに対して、反米感情は高まった。アメリカ軍はソウル市内に基地を持ち、裁判権を離さない。6年前にアメリカのヘッジファンドの投機的な行動によって、アジア通貨危機が起こり、韓国は経済危機に陥った。その機に乗じて、アメリカの企業や再生ファンドは、韓国の銀行や企業を格安な価格で買収した。また経済危機を克服する過程で、韓国にアメリカ式の市場経済が導入され、首切りが増えた。

韓国の賃金水準が高くなったので、工場の中国移転が進んだ。また出生率が低下し、経済成長力に衰えがみえてきた。労働組合は企業のリストラに対してストライキで戦い、その結果、賃金水準が高止まりし、一層のリストラを誘発し、労働運動と反米意識が結びついてきた。若い韓国人に考え方は明らかに反米的になった。

韓国人は、北朝鮮が核を持ったとしても、韓国に向かって発射するはずがない、狙いは日本かアメリカだと思っている。北朝鮮の経済危機が深刻なれば、次第に韓国の影響力が増し、巧くすれば核付きで吸収統合し、核武装した大国になれるかもしれない。アジアは予想外の方向に動いている。

ページのトップへ