- SRI 時々刻々
- 簡易保険資金掲載文
- 家庭に広がる リスク管理(06/2)
- 日本企業と手帳術ブーム(05/12)
- 変化の時代とフレキシブル・・ (05/9)
- 人口構造の変化と顧客の囲込み (05/8)
- 企業の中の女性社員比率が意味するもの(05/7)
- 新しいコミュニケーションとネットワークの格差(05/6)
- コミュニティの崩壊とコスプレ・ブーム(06/5)
- 日本が目指す企業と社会(05/4)
- コミュニケーション・スキル・ブームの背景(05/3)
- 時代の変化と新しいリスク(05/2)
- 組織に蓄積された独自のノウハ
ウを見直す(05/1) - 豊かさとロングステイ
- ソシアル・インフラが求められる
時代 - 情報化社会のコスト(04/12)
- 多様化する広告と成果
- 大学に進出する専門学校
- ワンストップ・ショッピングの場になった
- 仮想世界の可能性
- 高騰する発明 対価と日本社会
- ユニークなファンドの登場と消費者教育
- 人材流動化時代のひずみ
- インテリアブームと繁華街の不振
- IR活動ブームの背景と効果
- ライフスタイルの多様化と時間型サービス
- グルメブームで深まる文化
- ファスティングブームによって見直された断食
- 新しいコミュニティづくり
- 成熟社会と質屋ブーム
- 環境問題と新しいネットワーク
- 過去に向かう消費ブーム
- 価値観の変化と漁師ブーム
- ネットオークション市場の発達と
影響 - ライフスタイルの多様化と賃貸住宅の質
- 狂牛病が浮き彫りにした経済
システムの欠点 - ワインブームと庶民文化
- 顧客の意見に潜むビジネス
チャンス - リサイクル社会の実現は、システムづくりから
- その他
簡保年金資金掲載文(小泉三保子との共同執筆)
企業の中の女性社員の比率が意味するもの
女性社員の比率が高い企業は成長性が高いそうだ。女性社員活用の裏には、企業の先進性や従業員に対する配慮や組織形態など、企業の成長性を左右する様々な要素が隠れているのかもしれない。
先日、女性労働者の支援を目的にした21世紀職業財団は、女性が社内に占める比率が高い会社は、成長性が高い傾向があるというユニークは調査結果を発表した。その調査によると、女性社員の比率が、30%以上を占めている会社は、5年前に比べれば平均で約3割の売上増を達成しており、女性社員の比率が一割を切る会社は、平均で売上が約一割減少していたという。
いうまでもなく、女性を増やせば売上が上がるわけではない。女性社員の比率が高いということは、女性があまり退職しないことを意味している。つまり、女性比率の高さは、社員の働きやすさの一つのバロメーターとなるわけだ。
たとえば、アメリカ系企業のジョンソン・エンド・ジョンソンのメディカル カンパニーでは、女性が働きやすい環境を整えるために、『ダイバーシティ・プログラム』を実施している。『ダイバーシティ』とは、多様性を意味しているが、同社では、社内で女性が働きやすい環境を整えるという意味で使っているという。
メディカル カンパニーは、同社の医療機器が医療用具などを製造している部門で、女性の比率は、25パーセント前後に留まっている。同社では、もともと男女平等であり、採用者数は男女比にそれほど差がないし、女性管理職は15パーセント前後を占めている。それにもかかわらず、女性比率が伸び悩んでいるために、新しいプログラムを実施したわけだ。プログラムの内容は固定されたものではなく、新しい問題に気付けば、新しい施策を追加するという柔軟な方式をとっている。
働きやすさを目指した象徴的な施策の一つは、チャイルドケア支援制度だろう。それは、子供が生まれてから就学前まで、毎年30万円の補助金が出るという制度だ。
この制度が誕生したきっかけは、以前から会社が用意していたヘルパーの優遇制度を利用する人がほとんどいなかったからだという。子育てしている母親は、子供を預けられればどこでもいいとは考えない。特に赤ん坊の頃は、信頼のおける人に預けたいと思うものだ。子供が熱を出したときには、田舎からわざわざ親を呼び寄せていた人もいたという。
子供の育て方は人それぞれだ。それなら、各社員が好きな育て方ができるように、使途自由の補助金制度をつくったのである。子供が熱を出した時のタクシー代などにも使えるようになり、使い勝手は格段によくなった。
この制度を利用できる条件は、一ヶ月の育児休業を取得することだ。つまり、チャイルドケア支援制度は、育児休業制度の利用を促進させるための制度でもあるわけだ。現在では、ほぼ100%の女性が、育児休業制度を利用するようになったという。
チャイルドケア支援制度や育児休業制度は、奥さんが、同社の社員でない限り、男性社員も使える。ところが、男性社員の利用者は皆無だった。男性にとっては、一ヶ月間休むことは、ハードルが高すぎたわけだ。そこで、男性に対しては、子供が乳児の時に連続5日、土日を含めれば一週間の特別休暇を取得できるという制度を用意した。一週間の連続休暇なら抵抗感はなく、ほとんどの男性社員が利用しているという。一週間の連続休暇をとって、子育ての楽しさや大変さを実感して、後に、連続一ヶ月休職を取得することも可能だ。そうすれば、30万円のチャイルドケア支援制度も利用できる。1週間の連続休暇制度は、まだ始まったばかりだが、それが、男性の連続一ヶ月休職制度の利用者拡大の起爆剤になることを期待しているようだ。
また、女性の下着メーカーのトリンプでは、女性が気兼ねなく定時に帰れるように基本的に残業を禁じてしまった。サービス残業をすれば、部の予算から罰金を払わされるし、事前に残業申請をする時には、以後、どうすれば残業しなくてすむのか「再発防止案」を提出しなくてはならない。
合わせて、同社では、毎日2時間仕事に集中する「がんばるタイム」を設けた。その時間は、たち歩きも、部下や上司に話し掛けることも、電話もコピーも全て禁止だ。このように時間管理を厳しくしたことで、かえって生産性は向上したという。定時に帰れることは、男性社員にとってもうれしいはずだ。
もちろん、これらの会社は、非常に厳しい面もある。先のメディカル カンパニーでは完全な成果主義であり、子育ての真っ最中でも、自宅のパソコンで大晦日も正月も働くことは当たり前だという。また、トリンプでは、管理職が、業務上の問題点を社長から徹底的に詰問される『朝の会議』が有名だ。
高い能力を持ち、なおかつガムシャラに働ける人の絶対数は少ない。女性が働きやすい環境を整えれば、他社からの転職志望者も増えるだろう。確実に優秀な女性を確保できるわけだ。女性比率が高い企業の成長性が高い理由は、このように優秀な人をうまく集めているからだろう。さらに、今後は、労働力人口が減少に向かう。優秀な女性の確保が、その時の勝負の要と捉えている企業も少なくない。
ところで、女性比率が高いということは、異なる価値観の人が一緒に働いていることかもしれない。アメリカのミュージカルでは、初顔合わせのメンバーや年齢がかけ離れたメンバーが手がけた作品ほどロングセラーになる傾向があるそうだ。逆に、いつもの気心が知れたメンバー同士だと、失敗作の割合が高くなるとういう。シリコンバレーにおけるソフト制作でも、同様の結果が出ているそうだ。
日本の伝統的な企業の異動や転勤にも、同様の効果があったのかもしれない。ところが、現在では、コストのかかる異動や転勤は抑えられメンバーが固定化される傾向にある。また、不景気で採用を抑えていたため、社内の年齢的な断絶も広がっている。こうした中で、均質の男性ばかりが働いていれば、生産性がさがったり、新しいアイデアが生まれないのは当然のことかもしれない。
それに対して、女性比率が高い企業は、男女という異質な価値観をあわせ持つ集団になる。また、女性の働きやすい環境を整えるといった先端的な取り組みをする会社は、当然、仕事のやり方、採用制度などでも先端的な傾向がある。転職者を積極的に受け入れたり、外国人社員が多かったり、アウトソーシングを積極的に利用したり、在宅勤務を導入したり、プロジェクト制度を取り入れたりといった具合だ。 こうした制度は、企業によってバラツキがあり、比較をするのは難しい。しかし、女性が占める社員比率、管理職の比率などは、全社が直面している問題なので、比較が容易だ。今後、女性比率の比較は、会社の成長性を占うバロメータの一つに加わるかもしれない。