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ワンストップ・ショッピングの場になった駅

10分カット、雑貨店、英会話サロン、カフェ、コンビニエンスストアをはじめ、駅に様々な施設ができてきた。

駅は便利なワンストップショッピングの場になりつつあるようだ。

かつて、ターミナル百貨店やスーパーマーケットは、ワンストップ・ショッピングを武器に成長してきた。商店街を歩き回ることに比べれば、一つの店で、衣料品から食品まで買えるのは非常に便利だった。ターミナル百貨店は、乗り換えついでに買い物できた。

ところが、女性も男性並に働き、忙しくなったので、百貨店やスーパーマーケットは広すぎて不便になった。今では、百貨店やスーパーマーケットは、専門店やレジャー施設と複合化を図って巨大ショッピングセンターをつくるようになった。暇な時にワンストップでゆっくり遊ぶ場所になった。

現在は、便利なワンストップの代表はコンビニエンスストアだろう。コンビニエンスストアは、物販だけではなく、ATM、クリーニング、宅配便、通信販売の受け取り窓口、百貨店のお中元の申し込み代行、公共料金の支払い窓口をはじめ、多様な機能を担うようになってきた。コンビニエンスストアは24時間開いているし、家の近所にも、会社の近くにもある。しかも、店内は狭いし、入り口のすぐ近くにレジがあるので、用事はすぐに済む。忙しい人は、コンビニを愛用するようになった。コンビニには、多くの客を集めるので、コンビニと提携する企業は増えている。ついに、郵便局まで提携した。

大都市の駅も、便利なワンストップ機能の充実に努め始めた。駅には、通勤・通学のために、膨大な数の客が1日2回通過する。そこで用を足せば、わざわざ街のコンビニに出かけるよりも、はるかに便利だ。

人々が多様なサービスを楽しむようになったので、時間短縮型の店は増加の一途を辿っている。10分カット、クイックマッサージ、セルフ式格安コーヒーショップなどはその代表だ。駅にぴったりのサービスが、すでに揃っていたわけだ。さらに、駅向けに短時間のエステや英会話などの特別メニューを開発する企業も現れた。

もちろん、駅には、従来から、レストランや売店など、様々な機能が揃っていた。しかし、その多くは、鉄道会社の関連会社によって運営されていた。一種の独占が長く続いていたため、駅意外の場所で、通用するレベルのサービスを提供できる店は少数派だった。それに対して、現在では、「無印良品」「スターバックス」「キュービーネット」をはじめ鉄道会社とは無関係な有名店がどんどん出店している。JRが有名店のフランチャイズに加盟して、店舗を自ら運営するすといったケースもでてきた。

鉄道会社が、優良な店舗を誘致すれば、収益が増加する。少子化や都心回帰によって、今後は、鉄道事業の収益の増加はあまり期待できない。その上、人々の生活水準の向上とともに、トイレやベンチをはじめとした構内設備はきれいに快適にしなくてはならない。また、騒音対策や省エネ対策など環境対策への投資は、今後、増加の一途をたどどるはずだ。このような環境の変化が、鉄道会社の意識を大きく変えたに違いない。

鉄道会社は、単に有名店を誘致するだけではなく、自分達でも、優れた業態を開発しようと考えるようになった。たとえば小田急電鉄はイートインのおにぎり屋「おだむすび」をつくり、京王電鉄はカレーパン専門店「貴婦人のカリーパン」をつくった。駅に用事がない人も、わざわざ食べにやってくるほど成功している。

東急電鉄でも、2000年から、駅構内を充実させるためのプロジェクトが発足し、そこから、『ランキンランキン』という新しい業態の店が誕生した。この店は、名前の通り、ランキングの上位に入る商品と、今後、ランクインしそうな有望な新製品を並べた店だ。店頭を新製品のプロモーション会場に貸し出すこともある。人気商品を紹介すると同時に、この店からヒット商品を出すことも狙っているという。

店内には、顔やせグッズ、耳掻き、CD、沖縄の食品、お茶、書籍、菓子類など約200カテゴリーの商品が並んでいる。CDのように沢山の種類がある商品については1位から10位まで、商品の種類が少ないものについては1位のみの商品を紹介している。ランキングの入れ替えは、売れ行きが極端に変わるものは毎週、あまり変わらないものは1ヶ月おきといった具合に商品特性に合わせている。ランキングに使われているのは、東急グループの『東急ハンズ』や『東急ストア』、JR東日本のコンビニにニューデイズ、音楽情報会社オリコンなどのランキングデータだ。

現在は、次から次へと新製品が出てくるので、世の中の売れ筋を掴むだけでも大変になった。新製品や流行などを紹介する、いわゆる情報系の雑誌やテレビ番組やサイトなどの人気が根強いのは、その現れだろう。『ランキンランキン』は、その店舗版を作ろうとしたわけだ。店内を一周すれば、雑貨やCDや書籍などのベストセラーが一目で分かる。また、実際に手にとれるので、その点は、どんな一流の雑誌もテレビも適わない。このような店は、海外にもないので、海外から取材や視察団が訪れることもあるそうだ。

もちろん『ランキンランキン』で、実際に買い物する人も多い。たとえば、高校生の間でヒットしている商品を売っている店には、中高年層などは入りにくい。しかし、『ランキンランキン』は、全ての年齢層を対象にしているので、入りやすいし買いやすいわけだ。

渋谷で誕生した『ランキンランキン』は、順調に売上が上がったので、現在は、自由が丘と新宿にも出店している。先日は、イベントとして名古屋に約1ヶ月出店した。将来は、全国展開も目論んでいる。

このように、大都市では、電鉄会社が駅を使って、コンビニエンスストア以上の便利なサービスを展開しようと頑張っている。

地方の観光地の駅は対照的だ。観光地の駅には、大勢の人が集まる。しかも、乗り継ぎが悪いために、駅で30分くらい待つのは普通だ。駅の周辺には、時間をつぶせる施設がない。それにも関わらず、駅の構内には、旧態依然の施設しかないし、みやげ物屋では一流品は売っていない。多くの客は、ただぼんやりと駅にいる。

もし、大都市の駅のように短時間で受けられる便利なサービスや、『ランキンランキン』のように、地元の売れ筋商品などを並べた店を作れば、もっと売上は上がるはずだ。

ビジネスチャンスを最大限に活かすところと、せっかくのチャンスを見逃すところと、今後、ますます差が開きそうだ。

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