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新しいコミュニケーションとネットワークの格差

最近、インターネットのソーシャル・ネットワーク・サービスに加入する人が増えてきた。その利用法によって、現実世界の人脈も変わりそうだ。

インターネットのサービスが始まった頃、ネットを通じれば、あたかも世界中に友人ができるようなことが盛んにいわれていた。ところが、ネット人口が増えるとともに、ウィルス、サイトへのいたずら、ネットを通じた誹謗中傷、個人情報の流出をはじめ、様々な問題がでてきた。また、実際に議論やコミュニケーションが活発なサイトでも、顔が見えないため、参加者の中には、年齢・性別、職業などを偽る人が少なくない。結局、実際にオフ会などで確認し合わなくては、現実のネットワークには発展しなかった。ネット上では、深い議論はできても、見ず知らずの人とネットワークを築くことは難しいと分かってきたわけだ。

そこで、最近はSNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)というサービスを利用する人が増えてきた。SNSは、一昨年くらいにアメリカで始まったサービスで、その最大の特徴は、紹介者がいなければ利用できないことだ。日本でも、昨年あたりから、同様のサービスを始める企業が出てきた。

日本で最大手のSNSであるMIXIを例にあげれば、次のような順序で会員を拡大している。最初は、このサービスを運営している株式会社イー・マーキュリーの社員や、その友人・知人が登録したそうだ。登録料・利用料は無料だ。彼らは、それぞれの友人・知人を紹介していった。こうすれば、ねずみ算式に会員は増えていくわけだ。現在、登録者数は約50万人、1日2000人くらいの割合で増えつづけているという。

ところで、MIXIでは、どんなことができるのだろうか? 

まず、登録すれば、自分のページがもらえる。そこには、自分のプロフィールを書く欄、日記を書く欄、自分の友人・知人を紹介する欄、自分が所属するMIXI内のコミュニティを紹介する欄などがある。

たとえばAさんが、Bさんを会員に誘ったとすれば、Aさんのページには、Aさんの友達としてBさんの名前が自動的に掲載される。Bさんの名前をクリックすれば、Bさんのページに飛ぶので、誰でも、Aさんの友人Bさんは、Aさんとどんな関係で、どのような人物なのか分かるわけだ。同様にAさんがCさん、Dさんも誘えば、Bさんの隣にCさん、Dさんの名前が並ぶわけだ。Aさんを共通の友人としてもつBさん、Cさん、Dさんは、なんとなくお互いのことが分かるようになる。

また、Aさんが日記や映画の感想などをかけば、日記の下に、他の人がコメントをつけられる。Bさん、Cさんがコメントを書けば、なんとなく、お互いの人柄もわかるわけだ。さらに、Aさんが、BさんとCさんが知り合えるように、「BさんとCさんは、趣味が同じなので、きっと気が合うと思いますよ」といったコメントを加え、やりとりしやすい雰囲気を作れば、いずれは、BさんとCさんは知り合い同士になる。実際に知り合いになれば、Bさんの友人欄にCさんを掲載することも可能だ。

このような繰り返しで、友人の友人、そのまた友人までネットワークを広げていこうというわけだ。同様に、スポーツや料理などの趣味のコミュニティに加入しても、ネットワークは広がっていく。その他にも、ネットワークが広がりそうな機能が沢山揃っているが、一番重要なのは、登録した人全員が、誰の紹介で加入したのかはっきりしていることだ。

もし、礼儀をわきまえない行動をすれば、実際の知人である紹介者に迷惑がかかる。だから、ほとんど全ての人が、モラルを保った行動をするそうだ。また、たとえウソや偽りを書いても、友人・知人とリンクが張ってあるために、すぐにばれる。

モラルが高いコミュニティであるから、本名や職業や会社名などを出している人も少なくない。自分の素性を明らかにしているから、無責任なことを書かないわけだ。

プロフィール検索や日記検索の機能もついているので、コミュニティの中から、MIXIに登録している人全員の中から、同じ職業や趣味の人、あるいは、同じコンサートや映画などに足を運んだ人なども探せる。実に質の高い評論をみつけたり、著名人のページを発見することも少なくない。自分が、他人のページを覗けば、「足跡」が残るので、見られた人は、見た人のページを覗ける。コンサートの感想を日記に書いたら、出演した本人が、自分のページを覗きに来るといったことも珍しくないという。

友人同士を引き合わせる世話好きのグループに入り、また、コミュニティに積極的に参加してネットワークを広げる努力をすれば、驚くほど人脈が広がっていくし、時には、仕事につながることもある。一方、何もせずに待っていれば、加入しても人脈はまったく増えない。友人欄は、ずっと1人の人から、400人くらいまでと実に差がある。さらに、SNSがスタートして1年以上が経過しているにも関わらず、未だに周辺に登録者がみつからずに、加入できない人も少なくないという。

友人・知人を一種の連帯保証人にすることで、信頼感の高いコミュニティを作ろうとするのは素晴らしいアイデアだが、現実世界で持っているネットワークの差が、数倍に拡大しそうだ。それが所得格差につながる時代も、まもなくやってきそうな気もする。

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