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5月19日
原子力発電公社の設立を
増え続ける世界の原発
大型な新技術製品は大事故を起こすことが多いが、大事故が技術進歩を促進し、安全な製品が生まれるものだ。
豪華客船ではタイタニック、大型飛行船ではツェペリン号、超音速旅客機ではコンコルド、宇宙ロケットではコロンビア号等が大事故を起こしたが、改良を重ね、現在では、いずれも安全な輸送手段となっている。
原子力も例外ではなかった。今までしばしば大事故を起し、その都度、原子発電は危険であり、中止すべきだという意見が拡がった。しかし、それらの事故は、何れもトラブルで済むはずだったが、判断ミスや操作ミスが重なって大事故に発展したものだ。
そこで、設備装置を改良し、操作員を訓練すれば、事故を防止できると判断され、多くの國で大規模な原発計画が実施された。今や、世界で約450基の原発が運転中であり、建設中と計画中の原発はそれぞれ約50基に達している。
福島原発の事故の原因はまず津波であり、つぎに危機管理能力の欠如だった。政府は防潮堤を高くし、危機管理能力を高めれば、大事故を防げると判断し、まず、近々大地震が予想される浜岡電発について、防潮堤を高くするまで、運転停止を決めた。原子力発電が全電力の30%を占めているので、現実的な対策と云えよう。
世界では、ドイツとスウェーデンが原発を縮小するようだ。しかし、ドイツはフランスの原発から大量な電力を輸入しており、原発の脱却が進んでいるわけではない。フランス、旧ソ連圏の國、中国、インド等では、福島原発事故の影響を受けずに、建設を進める計画だ。
世界の原発プラント製造企業は 今後、福島原発事故を研究し、冷却システムを改良して安全性を高めるだろうから、世界の原発は新興国を中心として増加し続けるだろう。
ところで、関東地方では、今年の夏の電力不足は、大口利用者や家庭の協力によって15%節電を実現し、乗り切る予定だ。ところが、その先が心配である。現在、定期検査中や、今後、定期検査予定の原発は、住民の反対が強いので、点検終了後の運転再開が難しい。下手をすると、来年以降に日本の原発の大半が止まり、関東だけではなく、日本全体が電力危機に落ち込みかねない。
電力産業の再編成を推進
日本経済がすっかり弱くなった時に、東日本地震が発生した。大震災の数年後には、復興需要に支えられて、経済は成長すると言われるが、東北の被害地では高齢化が進み、津波で攫われた漁業、農業、工場を再建する力が欠けている。年配者が、一からやり直すのは難しい。復興景気は期待でない。
そうした時に、もし、大半の原発が停止し、電力不足分が、LNG発電や太陽光・風力発電によってカバーされるようになると、電力コストが上昇するから、企業は工場を海外に移転し、日本の経済力はさらに弱くなる。
電力会社は、住民に停止原発の再稼働を説得出来ないだろう。そこで、全電力会社の原子力部門を統合した国営原発公社の創立が必要になるに違いない。
近年、地震研究が進み、多くの原発が活断層の上にあることが判り、また地震が多発する時代に入った。原発公社は全原発の地震リスクを総合的に把握して、重点的に大補強をすること、政府は事故の際には上限なしで補償することをそれぞれ約束する。そうすれば、原発の再稼働に対する住民の反対が減るだろう。
原発が公社経営に移ると、電力会社は身軽になる。その時には、発電と送配電の分離など電力産業の本格的な再編成を進め、電力の売買や価格を一段と自由化すれば、激しい競争が発生して、自然エネルギーが普及しやすくなるだろう。