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11月24日
小型増税と適度なインフレ
穏当な政策でも反対多数
誰でも税金を払いたくはないが、豊かな福祉を得る権利は主張したいものだ。この矛盾した要求を満たそうとするのが民主的な政府である。そのため、低成長経済下の民主主義国は、すべて財政赤字に苦しんでいる。日本はその最たるものであって、税金は財政支出の半分を満たしているだけであって、残りは借金(国債)に依存している。
今や、日本はすっかり高齢化社会になり、年金や医療費のための財政支出が激増し、国債は累増している。国債の最大の買い手は銀行である。経済が長期低迷し、銀行は借り手が少ないので、多額な余剰資金を抱えているからだ。
今後、高齢人口が増えると、預金を下ろして生活する人が多くなる。そのため、遠くない将来、銀行預金が減り、国債の買い手がいなくなる。その時、国家財政は破綻し、日本はギリシャになる。
それを逃れる方法は3つある。第1は経済成長率を高くして、税収を増やすことであるが、現在の日本経済では無理な願いだ。
第2の方法は増税と財政支出のカットである。増税には消費税の引き上げしかない。法人税を増やせば、企業は成長力が弱まり、また多くの企業が税金の低い海外諸国に逃げ出す。所得税増税は働き盛りのサラリーマンに対して負担が大きくなる。
消費税を引き上げ、貧しい人には社会保障費を配るのが、最も妥当な方法であり、それには国民総背番号制が必要だ。しかし、國の借金を増加せずに、現在の福祉水準を守るためには、消費税率を30%近くに引き上げなければならない。これは国民の反対が強く、到底無理だ。
そうなると年金の受給年齢の引き上げや老人医療費の自己負担の増加等の福祉水準の切り下げが必要になるが、これも難しい仕事だ。
また大幅な増税と財政支出のカットを同時に実施すると、内需の縮小、景気の下降、税収の減少という現象が起こり、財政赤字はかえって拡大するという危険性がある。
そこで、野田内閣は消費税を10%に引き上げ、年金の受給年齢を数年引き上げるという穏当な政策を狙っている。しかし、それでも、野党は勿論のこと、与党でも選挙を考えて、反対する議員が多い。
第3の方法は、今までと同じように財政赤字を拡大し、国債の大量発行を続け、将来、国債が売れなくなった時には、日本銀行が国債を買うのである。通貨発行量がどんどん増えて、インフレになるだろう。
年3%程度なら消費刺激
ところで、現在のようなデフレの時には、消費者の購買意欲は弱いが、インフレになると、人々は買い急ぐから、内需が拡大し、景気が上昇する。インフレが進行し過ぎると、売り惜しみや買いだめが発生して、経済は混乱するが、年間3%ぐらいのインフレに止めることができれば、消費が絶えず刺激され、経済が成長し、所得が増えるだろう。また物価が上昇すると、國は借金が目減りして得をする。これに対して、国民は預金等の金融資産が目減りするから損失を被る。つまり、所得が金融資産を持っている国民から、國に移転し、國家財政は好転する。その際、金融資産が多い高齢者層の損失が大きいから、高齢者層は働き盛りの年代より生活に余裕があるという現在の世代別の所得格差がいくらか解消される。
インフレが進むと円安になり、輸出が増加して景気が上向き、消費も伸びるだろう。それとともに、税収が増えるはずである。政府は現在のように円高の時、外貨資産を大量に買うべきだ。将来、円安になった時に、それを売却すると、膨大な差益が得られる。
野田内閣が意図しているような適度な財政圧縮・消費税の小幅引き上げという政策では財政赤字は余り減らない。そのため、将来、日銀が国債を買い入れるようになり、インフレが発生するだろう。その際、インフレを適度に抑えることが出来れば、財政再建に成功する。