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2月10日
アメリカの思想対立は解消するか。
人口の25%が福音派
ツーソンの事件は銃の國・アメリカとしては大きな銃撃事件でなかった。しかし、アメリカ社会には、民主主義の根幹を揺す事件として衝撃を与えた。
アメリカでは、保守派とリベラル派が激しく対立している。撃たれたギィフォーズ・下院議員はリベラル派に属し、医療保険法案に賛成、アリゾナ州の不法移民法に反対であって、アリゾナ州の地元では彼女の政治姿勢を憎む人が少なくなかった。彼女は選挙民との対話集会で撃たれ、言論が封ぜられた。
下院は、直ちに、一週間休会して喪に服し、大統領はアリゾナの追悼式に駆けつけ、40分も演説をして犠牲者に対して民主主義を守ることを誓った。
保守派とリベラル派の対立の焦点は医療保険法だ。保守派によれば、医療保険に加入するかどうかは国民の自由であり、政府が強制できない。国民はいろいろな方法で病気に備えられる。
例えば、1,摂生する。2,勤勉に働き所得をふやす。3,株式や不動産投資にとって財産を殖やす。4,自分や子供に教育投資をして家族の所得を増やす等がある。
医療保険への加入は選択可能な方法の1つに過ぎない。それにも拘わらず、政府が増税して、加入を強制するのは、国民から選択の自由を奪うものだ。。国民皆保険を望まない人が多いはずだ。
こうした考え方はプロテスタントの信仰と深い関係がある。その信仰によると、聖書を読み、質素に暮らし、熱心に働き、自助努力に励み、病気の時には、自らの負担で治療する。そういう生活を営んでいる人が神の寵愛を受け、救済されるはずである。貧しい人も神の寵愛を得たいから、自助努力に励もうとしている。国家の援助は余計な御世話だ。
最近20年間で、厳しい考え方をする原理主義の福音派が増え、人口の25%に達したという。ティー・パーティーは福音派の政党である。彼等は同性婚や妊娠中絶に反対し、不法移民に対する厳しい取り締まりに賛成している。自助努力と伝統的モラルの復活が、アメリカを強くすると信じている。
これに対して、リベラル派は激しい市場競争が生み出す格差を問題にしている。貧しい人の子供は教育を受けていないので、競争社会の敗者になり、格差が伝承・拡大されている。その結果、貧しさのために能力を発揮できない人が増えている。
国際的地位の低下影響
福祉社会をつくり、貧しい人の教育水準を高めれば、良質な労働力が増え、経済は発展する。当然、皆医療保険制度が必要である。また移民を差別せず、働く機会を与え、同性婚や妊娠中絶の権利を認め、自由な社会をつくりたい。それがアメリカ経済を発展させ、神の祝福を得られる道だ。
保守派とリベラル派の対立が激化した背景には、アメリカの国際的地位の低下がある。中国とインドの経済力が驚異的なスピードで向上し、ハイテク産業が急成長して、アメリカの企業を脅かしている。インフラ投資が進み、ユーラシア大陸の東半分には、高速道路、鉄道、パイプライン網が完成しつつある。
アメリカはイラク・アフガン戦争で敗色が濃いのに対して、中国は軍事力が強大になり、西アジアやアフリカで影響力を高めている。アメリカ人は焦り、苛立ち、国内では言い争いが激しくなった。
オバマ大統領は、一般教書演説でアメリカ人は同じ家族であるから、団結しようと訴えた。また中国、インド、韓国との競争に負けないように、政府は無駄な支出を省き、教育、研究開発、インフラ等へ投資を拡大することを約束した。アメリカが強くなれば、思想対立が消えると考えている。
しかし、相手は、いずれも異文化國であり、アメリカ人が予想できない強さを持っている。勝つのは困難だ。アメリカの不安は続く。