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11月10日
ギリシャの破産と日本の消費税
世界規模の経済危機誘発か
財政赤字の拡大は経済力が弱まった民主主義国の宿命である。政党は福祉の拡大と減税を掲げて選挙民の支持を狙い、選挙民は僅かな税負担によって、豊かな福祉を得たいと願うのである。
財政赤字の拡大には限度がある。国債が増加して市場に溢れると、国債の流通価格は暴落(金利は暴騰)する。新規国債の発行が困難になり、財政は破綻状態に落ち込む。ギリシャはそうなった。
普通の國では、為替レートを大巾に切り下げて、輸出主導型の成長を実現し、税収を増やす方法がある。しかし、ギリシャの通貨はユーロに変わっているので、ユーロを脱退しない限り、通貨の切り下げは不可能である。
ギリシャ政府は、11年前に通貨をユーロに変えた時、大量な低金利資金を調達した。それを農業、観光業、製造業等の分野に投入すれば、通貨がユーロに変わっても、輸出と内需が拡大し、税収が増えたはずだった。
ところが、ギリシャ政府は低金利に喜び、贅沢過ぎるインフラの建設や公務員の賃上げ等、経済成長と関係ない分野に使ってしまった。そのため、経済成長力は弱いままであり、膨大な政府の借金(国債)だけが残った。
ギリシャは、今や、発行した国債の元利金を支払えない。ギリシャ国債の価格は暴落したので、それを所有している世界の銀行は大損失を被った。またイタリアやスペインなど南欧諸国も財政危機に落ち込んだ。世界の銀行は損失を少なくするため、ギリシャ国債だけではなく、イタリア・スペイン等の国債も売却した。その結果、それらの価格も暴落した。
ヨーロッパでは、銀行が国債価格の暴落によって大損失を被り、資金繰りに困り、融資先企業から資金の貸し剥がしを続けた。その結果、企業倒産が激増し、財政危機、金融危機、経済不況が同時に進んでいる。それは世界的スケールの経済危機を誘発しそうだ。
ギリシャ政府は倒産した。銀行は取引先企業が倒産した時には、まず貸し付け債権の1部を棒引きすることがある。それによって、企業が立ち直れば、残りの債権が助かるのである。EUとユーロの首脳は、「ユーロ圏の銀行は所有しているギリシャ国債の半分を自主的に棒引きする」ことを決めた。残りの半分の国債を助けようと言うわけだ。
財政赤字縮小すべき時期
銀行は、次に、大型融資を行って、企業が大型なリストラを進め、不要な施設を閉鎖し、かつ経営を続けられようにする。欧州金融安定化基金は、約100兆円の資金を保有することになった。この基金は、ギリシャ政府が公務員を大量に整理し、無駄な投資や支出をカットしているかどうかを監視しつつ、財政再建の資金を融資するのである。
IMF(国際金融基金)は、ユーロ圏に対して本格的な資金援助に乗り出した。イタリアは進んでIMFの管理下に入り、財政の信用力を高め、国債価格の暴落を防ごうとしている。
ギリシャ国民は、首切りと公的なサービスの低下を覚悟しなければならない。これを嫌ってユーロを飛び出せば、新通貨は暴落し、ユーロ建ての借金を返済する負担は数倍に膨張する。貧しさに耐えるしか方法がない。
ところで、日本政府の借金額(対GDP比率)は、ギリシャより遙かに多い。高齢化と共に貯蓄が減るから、間もなく、国債の売り先は海外になり、国際金融市場に曝される。その時、依然として、財政赤字が拡大していたならば、国債価格は暴落し、財政赤字はさらに拡大するだろう。
もし、日本産業の空洞化が一層進んでいれば、日本はギリシャになる危険性がある。消費税を大巾に引き上げ、財政赤字を縮小すべき時期は、目の前に迫っている。