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4月14日
国民が1つになった
自粛、節約、寄付の気運
日本全体が大震災と原発事故を悲しみ、今でも、喪に服しているようだ。先の甲子園大会では、満塁ホームランを打った選手は喜びを全身に現し、跳ね上がってホームインしたかったに違いない。しかし、彼は高ぶる気持ちを抑え、ホームを走り抜けるだけだった。応援団も、笛や太鼓を鳴らさず、静かに拍手をするだけに止めた。選手は未曾有の大震災の悲しみの中で開催された大会だと自覚していた。
全国各地では、桜祭りも夏の花火大会も中止を決めた団体が多い。被災者の気持ちを忖度して、大型イベントは悉く自粛である。大震災後、皆・善人になった。東京では牛乳、ヨーグルト、水が不足したが、物不足に乗じて、値上げして儲けようとする店はなかった。始めは買い占めする人がいて混乱したが、そのうち、どの店も1人一本という制限をもうけ、普段の価格で売った。人々は計画停電にも、電車の間引き運転にも、文句も言わずに、不便に耐えた。
新宿駅始めとする鉄道の拠点駅では、所狭しと大勢のボランティア集団が屯して、震災義捐金集めに声を嗄らしている。彼等は、現地へボランティア活動に行きたいが、現地に受け入れ余地がないので、やむなく、募金活動に熱中した。
オーナー企業家も、タレントやプロ・スポーツ選手も争うように大金を寄付をし、100億円を寄付する人もいた。殆どすべての人は、勤め先の企業や、属している組織で寄付をし、かつ街頭でも寄付に応じた。
表参道など都心部の盛り場では、福島県や茨城県の野菜の直売市場が開かれている。人々は放射能汚染の風評を全く気にせず、農民に深く同情し、喜んで買っている。何れの場所でも、例年の直売市場の3倍近くも売れたそうだ。両県の野菜は普通の流通ルートでは嫌われたが、直売所では飛ぶように売れたのだ。市民は健全な感覚を持っていた。
全国の自治体が活躍している。災害地の自治体では、役所の建物が潰れ、多くの職員が死亡した。救済・復興の拠点を作れない。全国の自治体は、姉妹提携している被災地自治体に職員を派遣した。また新たな姉妹提携が被害地全体の自治体に拡がった。
救済・復興の仕事は専門性が高い。まず、医療・看護、緊急物資搬送、上下水道の建設などの緊急ティームが派遣された。これから、避難所の運営・移転、高齢者・病人の介護、仮設住宅の割り当て、住民の移転先の把握、住民との対話と説得等、地元職員と一体となった仕事が始まり、派遣職員は長期になるだろう。
日本固有の強さが戻る
私たちは大地震によって日本列島の危うさを改めて認識し、原発事故によって日本の技術水準の低さを悟り、茫然自失の状態である。こうした時には、買い物や旅行をする気になれない。節約すると、節約された資源が被災地に回るような気持ちになり、消費を削った。
そのため、大震災以来、個人消費が大幅に低下し、東京の百貨店では、売り上げが例年より30~50%も減り、自動車の販売台数は35%も減った。
個人消費が縮小すると、景気が下降して、雇用と税収が減り、救済・復興の資金が不足するだろう。国民は自粛を止めて、遠慮せずに消費すべきだと考える人が少なくない。
景気の低迷は問題である。しかし、未曾有の災害の中で、戦後長らく忘れ去られていた、痛みを分かち合って国難を乗り切ろうという同胞意識が目覚めた。助け合う気持ちと、自粛、寄付、節約の気運が拡がるにつれて、日本再建のために頑張るという意欲が盛り上がり、国民の心が1つに固まった。日本固有の強さが戻ってきたのだ。その成果は、景気低迷というデメリットカバーして余りある。
心配は菅政権の危機管理能力だけになった。