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9月29日
ユーロ危機とドイツの責任
膨大な財政赤字に策なし
世界経済は巨大な負債の重圧に押しつぶされ、危機に追い込まれている。欧米の人々は、うかつにも、今世紀に入る頃、多額な借金をして、分不相応の生活を送ってしまった。また民主主義国では、政府が選挙に勝つために、膨大な財政資金をばらまくので、国債が累増し、返済できないほどの金額になっている。
先進国経済はいずれも、身動きできない状態であり、景気政策も打てない。そこから抜け出すには、負債を整理するしか方法がないが、どの國も失業者が多く、社会不安が拡がっているので、整理の仕方について深刻な政治的対立が生まれている。
アメリカでは、国民の多くは住宅ローンの重みに苦しみ、政府は膨大な財政赤字と国債の累増に悩んであり、そこから抜け出す方法を巡って、政治の世界では深刻な思想的対立が生まれている。日本では、政治家は膨大な財政赤字を前に狼狽え、断固たる政策を実行できない。
現在、最も危険な状態にあるのはユーロ圏である。ユーロの欠陥は参加国に経済力格差があることだ。ユーロに加盟すると、通貨も、金利も同じになる。経済弱国(例えば南欧諸国)では、それまで金利が高かったが、通貨がユーロに変わると、住宅ローンや消費者ローンの金利が下がり、住宅ブームが起きた。
また 政府は低金利の国債を発行して、インフラ投資、公務員給与の引き上げ、年金の拡充にあてたので、国民の生活水準が上昇したが、財政赤字は拡大した。内需が拡大し、物価が上昇した。その時、同じ通貨の経済強国・ドイツから工業製品が殺到した。
ドイツでは、企業の輸出が拡大し、銀行は経済弱國の銀行にユーロ資金を貸した。簡単に言えば、経済弱国では負債と消費が増え、経済強国では債権と生産が拡大したわけだ。
こうした関係は、必ず、破綻するものだ。リーマンショックによって、ユーロ圏の景気が下降した時、ローンを返せない企業や人が増えて、銀行の不良資産が増大した。政府は銀行を救済するために、公的資金を投入したので、財政赤字は一段と増加した。国債は発行額が急膨張し、次第に信用を失しなった。
昨年、夏頃から、まずギリシャ国債の価格が暴落し、ギリシャの財政が破滅状態に落ち込んだ。国債価格の急落は南欧諸国に広がり、国債を保有している銀行は大損害を被った。
経済強国としての責任
国際通貨基金(IMF)によると、国債価格の急落による損失は、最大で20兆円に達するという。それはユーロ圏で、銀行の連鎖倒産が誘発される大きさである。財政危機と金融危機が同時に発生してしまった。緊急対策が必要であり、直ちに、欧州金融安定化基金やIMFは必要な資金を機動的に投入できる体制を固めなければならない。
ユーロ圏には、財政が健全な國がいるので、国家債務総計の対GDP比率は85%であって、日本やアメリカより相当良好であるが、問題は加盟国が多く、一体となった対策を実施できないことだ。
ところで、ユーロ圏では、ヒト、モノ、カネの移動が活発になり、経済が効率化した。また中東やアフリカに対する軍事的、経済的影響力が増した。フランスやイタリアのリビアに対する軍事介入はその好例だ。ユーロ圏の主要国はユーロを守りたい。
この危機の克服には、ドイツとフランスの役割が大きく、ドイツは経済的負担を覚悟すべきだろう。ドイツ人は反対しているが、ドイツ企業は今まで経済弱国で稼ぎ、最近では経済危機のためにユーロ安になったので、ユーロ圏外への輸出が増加し、ドイツ経済は好調である。
この危機を克服する過程で、財政規律を厳しく守るという規定の重要性が再認識されて統合への道が固まるだろう。