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9月15日
経済危機と政治対立
リーマン後遺症残る米国
アメリカ経済は窮地に追い込まれている。3年前のリーマン・ショックの後に、景気対策と金融機関の救済のため合計1兆5000億ドルの財政資金が投入され、また金融の超低金利政策が実施された。
雇用が増え、株価が上昇し、それが消費を刺激して、今頃は、景気が上昇基調に乗っているはずだった。ところが、実際には失業率は9%を越え、住宅価格は低下し、1月から6月までの実質経済成長率(年率)は1%を切っている。株価は下がる一方だ。
不振の原因は、第1に、多くの家庭が、まだ多額の住宅ローンに苦しんでおり、消費を抑えて返済に努力している。住宅価格が低下したので、家を売っても借金を完済できない。つまり、リーマンショックの後遺症が、強く残っている。
第2に、製造業が海外に移転してしまった。景気刺激策によって内需が増えても輸入が拡大し、海外に工場や子会社を持っている企業の収益が増加するだけであって、国内の雇用拡大に結びつかない。
第3に、財政赤字が膨張し、最近では毎年1兆ドルを遙かに超え、国債発行が増え続け、財政破綻が迫っている。それは、最近まで景気対策として、膨大な財政支出が行われたからだ。その上にベビーブーマー世代が退職時期に入り、公的年金と医療保険が増え、また、同時多発テロ事件以来、アフガン・イラク戦争やテロ対策のため、国防費が激増したという、構造的な要因が加わった。
オバマ大統領は、アメリカは経済大国であり、内外の市場で米国債が売れるから、国家破綻に落ち込まない。また借金はやがて返せると主張している。
大統領は、緊急対策は雇用の増加だと考えている。交通インフラへの投資、教員の増加、雇用を増した企業には減税等、多様な政策が必要であり、それによって、失業者が減り、消費が増え、経済が効率化すると期待している。さし当たっての財源は、富裕層に対する増税であるが、やがて政策の効果が現れ、経済が成長して、税収が増加するという。
共和党はそれに反対であり、財政支出をカットし、税金を大巾に減らすべきだと主張している。そうすれば、民間企業の活力が強まり、投資が増え、景気が浮揚して雇用が拡大し、福祉水準も高まるという。 こうした自由主義者の中の急進派はティー・パーティーである。悪いのは政府が経済に介入し、またいろいろ指図することだ。子供の教育内容、医療保険への加入、シートベルトの着用、無害な食品などうんざりだ。自由にさせてくれ。自由こそ、経済活力、創造、幸福の源泉だという。
日本でも民主党内で政争
政府はアフガン・イラク戦争、住宅バブル、リーマンショック、経済の長期低迷等、失敗続きである。ティー・パーティー支持者には、政府を信用せず子供のホーム・スクーリング(学校に通わせない)が増え、医療界を信頼せず、インターネットで薬を調べて、買う人が多い。 この「原理的」自由主義は急速に拡がっており、共和党はそれに乗って「小さな政府」を強く要求し、民主党の「大きな政府」とは妥協しようとはしない。 経済が悪くなると、こうした政治対立が激しくなり、議会は政争に暮れ、適切な政策を打てない場合が多い。こうした悩みを抱えているのは、アメリカだけではない。
EUは財政危機に落ち込んでおり、多くの加盟国では、政府が財政支出のカットを発表すると、直ぐストと暴動が発生した。大巾な財政カットを決めたイギリスでは、ロンドン等の大都市で暴動が起きた。
日本では、民主党内で増税反対・ばらまき福祉の小沢派と、緊縮の反小沢が激しく対立し、破綻寸前の国家のようだった。幸い「野田ノーサイド内閣」が登場し、一息ついた。