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11月21日
「不況対策」の問題点
デフレ続き経済縮小
現在論議されている不況対策を大きく分けると、次の2つの考え方になる。第1は先ず銀行の不良資産問題を解決する。銀行の資産評価を厳しくして、再建可能な企業と倒産処理する企業に分け、再建可能な企業だけを救済する。倒産企業が増えるから、業界に企業数が減り、残った強い企業は利益が増大し、設備投資を増やす。失業者が多く、賃金は上昇しないので、企業の好収益が長く続き、また新企業が続出する。その結果日本経済はV字型成長を辿るはずだという。
同時に政府を効率化する。特殊法人を民営化し、かつ市町村を合併し、地方分権を進める。ゴミ処理、水道などの事業はアウトソーシングされ、行政の無駄が省かれるから、政府部門が経済成長の足を引っ張らなくなる。政府はこの考え方だ。
この政策の問題点は、デフレ経済が続き、日本経済が縮小し、国民は貧しくなる可能性が大きい。そうした時、銀行の不良資産が大幅に減り、企業の借入金返済負担が軽くなったとしても、企業が果たして設備投資を増やすだろうか。賃金が低下し、政府は膨大な借金を抱え、経済的弱者を救う力がないので、国民は将来が不安である。消費も伸びない。
中国から安い製品が続々と輸入され、企業の中国への工場移転が増え続ける。若者はひ弱になり、企業を起こす気力がないだろう。政府部門の効率化は、抵抗勢力が強くなかなか進まない。
第2は、政府が財政を拡大して需要を創り、日銀が国債を購入して、通貨量を増やし続けるという考え方だ。物価が上昇し始め、消費者が値上がり前に物を買おうとする。彼等は沢山の預金を持っているから、消費が増加し続け、物価上昇を伴いながら、景気が上昇するはずだ。
企業は売り上げが伸び、またインフレ下では実質賃金が低下するので、収益が増加する。その上、借入金はインフレによって目減りしているから、借入金の返済が楽になり、銀行の不良資産問題は自然に解決する。
景気が好調になった時、特殊法人の廃止、自治体事業のアウトソーシングなどの政府機構の改革、医療保険や年金の改革等に手を付ける。また国債はインフレによって目減するから、財政状態はかなり改善するはずだ。学者にこの考え方をする人が多い。
賃金低下避けられず
この政策では、バブル経済の時に企業数が増えた建設業、不動産業、流通業、金融業などの産業が整理されない可能性がある。またインフレともに円安になり、輸入物価が上昇して、インフレがスパイラルに進み、円安が経済摩擦を引き起こしそうだ。インフレによって預金が目減りするので、高年齢者は貧しくなる。
日本経済には、どちらの政策でも解決できない構造的問題がある。それは少子化・高齢化と中国経済の飛躍的発展の影響だ。この問題を解決するためには、中国などから出稼ぎ労働者を多く受け入れ、製造業の競争力を高め、また不足している介護労働力を増やすのである。国内に低賃金の外国労働力が増えると、治安が不安になり、また単純労働に従事している人達の賃金が下がるという問題が生まれる。しかし日本経済の構造的問題は相当軽減される。
どの政策でも、実質賃金の低下は避けられない。考えてみると、それは当然だ。バブル経済の時、民間企業が膨大な無駄な投資を行い、バブル経済崩壊後の長期不況期には、政府が景気対策のために無駄な財政投資を実施し、空しく15年以上が過ぎた。この間、アメリカ、中国、韓国等は成長した。EU諸国は変わった。日本経済は賃金水準を引き下げて、再出発することになりそうだ。 財政のばらまきを続けると、賃金水準はもっと低下するだろう。