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2002年
W杯と韓国経済
奇跡の再建で経済強国に
サッカーは観客を熱狂させる格闘技である。僅かな隙をぬってパスされたボールをゴールに蹴りこむ選手の姿や、ゴールポストの前で展開される、もみ合い蹴り合いの死闘は魅力に溢れている。その上Wカップはナショナリズムを刺激するようにできている。ヨーロッパのいろいろなティームに散っていた一流選手達が、この時だけ母国のナショナルティームに戻り、国歌の演奏から始まる試合で、母国の名誉を賭けて戦うのである。
日本中はサッカーで熱狂したが、韓国はもっと燃え、それに応えるように韓国ティームはポルトガルについでイタリア、スペインもなぎ倒した。逆転の粘りは韓国経済の奇跡の再建に似ている。今から5年前の韓国経済はアジア金融危機の影響を受けて悲惨な状態だった。外資は逃げ外銀は貸付金を引き上げたので、外貨が枯渇した。愛国的な国民は金や貴金属を供出して外貨不足の解決に協力した。韓国政府は外貨を引き寄せるために短期金利を30%にまでひきあげ、またIMFの援助を受けた。その頃失業者が激増し、激しい労働争議が頻発した。
韓国の企業は銀行借入金によって大規模な設備投資を行い成長してきた。韓国経済が深刻な状態に陥ると、企業は借入金を返済できない。銀行は膨大な不良資産を抱え、不良資産比率が15%近くなり、日本の銀行よりもっと深刻な状態だった。政府は銀行救済に乗り出した。33の銀行のうち7行を国有化し、銀行やノンバンクにGNPの30%に当たる巨額な公的資金を投入した。日本では約10兆円が投入されたに過ぎないが、日本政府が韓国並みの政策を実施したとすると、150兆円が投入されたことになる。
公的資金の投入と同時に、政府は銀行の経営者を退陣させ、刑事責任を追及した。また財閥企業を整理し、4大財閥のうち大宇は消え、現代は解体・再編成された。国有化された銀行はこれから民営化される。こうした手荒な政策によって、銀行は見事に復活し、企業に潤沢な資金を供給できるようになった。イタリアとのサッカーの試合のように、政府も国民も耐えに耐えて韓国経済を建て直し、現在では6%成長を遂げる経済強国になった。
日本を追い抜いた余裕も
韓国の多くの産業は日本に追いついた。5年前には日本は半導体王国だったが、今やそれは韓国に移った。三星電子は日本のNEC、日立等の巨大メーカーとの競争に勝ち、世界最大の半導体メーカーにのし上がり、現在世界各地に工場を展開している。鉄鋼でも韓国は日本の地位を脅かしている。ソウルの空港は東アジアのハブ空港に発展しつつある。
日本ではまだ銀行の不良資産問題が解決されない。銀行が資金を供給するという機能を果たさないので、多くの企業の力は衰え、スイスの研究所が発表している主要国競争力ランキングでは日本は韓国に抜かれた。日本には閉塞感が広がり、若者達は日本ティームが勝った時には日頃の憂さを晴らすかのように広場や道路で踊り狂った。
これに対して韓国は経済が強くなり、またサッカー大国をつぎつぎに倒した。サッカー場では愛国心にあふれた若者達の真っ赤なシャツが狂喜乱舞し、歓声の轟音が近くに雷が続けざまに落ちたように地響きをたてた。ソウル・オリンピックの時、韓国人は日本の相手ティームを応援したが、今回のW杯カップでは若者の多くはテレビ観戦で日本を応援したという。それはW杯サッカーの共同開催国であるという連帯感と、経済強国の若者らしい心の余裕とから生まれたといえそうだ。韓国は明らかにワールドカップでも完勝した。