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8月21日
間違った経済効果予測
コストは国民負担
幾つかのシンクタンクは、大型イベントや制度の大改革があるとその経済効果を計算し、NHKは直ぐそれをニュースとして紹介する。ワールドカップ、新札発行、住民基本台帳等いずれも経済効果がかなりあるとニュースが流れた。例えば新札の発行は4~5千億円のプラスの経済効果があるという。それはATMや自動販売機が置き換えられるから、それらの関連業界では売り上げと利益が増え、従業員数が増加するから、日本経済にプラスになるという考え方だ。
しかし、新札は偽札対策であり、そのために新札用の印刷機や、新型のATMや自動販売機いう余分な投資が必要になった。それは偽札防止のコストであり、そのコストは必ず銀行の貸付金利や飲料水等の価格に上乗せされ、最終的には国民の負担になるはずだ。その負担は経済に対してマイナスに働くだろう。これまで、とにかく物を生産しさえすれば、プラスの経済効果になると考えが広がった結果、日本中はハコモノだらけになった。まだ懲りないで同じ考え方による経済効果が発表されている。
住民基本台帳ネットワークの導入にともなって、ソフト業界やコンピューター業界では1兆円近くの需要が発生し、それだけてGNPを押し上げるという経済効果の計算が発表された。これもまるで変だ。経済効果を上げるためには、まずこのネットワークによって、自治体の仕事が効率化し地方公務員の数が激減することが必要だ。減少した人件費等の総額が、ネットワーク形成のための1兆円近い投資や支出を上回った時、始めて経済効果があったと云える。公務員の数が減らなかった場合には、1兆円近くの財政支出の無駄という大きなマイナスが発生したことになる。
ワールドカップの開始前には、幾つかのシンクタンクは、その経済効果が4000億円~6000億円に達するという予測を発表した。しかし実際には日本ティームの試合の時には街の人通りが絶え、タクシーは空車ばかりだった。テレビのある喫茶店やバーはお客で一杯になったが、彼等は2時間以上も帰らないので、客の回転率が低く、売り上げが伸びなかった。新幹線は混雑を予想して旅行を見合わせた人が多かったので、乗客が増えなかった。大型ホテルはイギリスのエイジェントから大量なキャンセルがあったので、普段よりお客が減った。
ソフトの充実が鍵
その上にワールドカップを開催した自治体は毎年10億円を超える競技場の維持管理コストが重くのし掛かってくる。ワールドカップは日本ティームが活躍し、日本中が熱狂する舞台であって、そのために膨大なコストが支払われたのである。しかし経済的にプラスになるという間違った予測が広がっていた。
夏はお祭りと花火大会のシーズンだ。いずれもハコモノなしで、数十万人の人が楽しみ、かつ伝統芸能が守られ、また花火技術が進歩するという効果がある。袋井の花火大会は僅かな期間で日本有数の大会になり、30万人が集まり、花火師達が技を競っている。観客の鑑賞力がもっと高まり、警察が協力して陸橋を観客に開放すれば、袋井が世界の花火レジャーをリードできるかもしれない。お祭りや花火が栄えるためには、踊りや笛・太鼓・三味線等の伝統技能のレベルが住民の熱心な練習によって向上し、また観客の花火の審美眼やマナーが向上することが必要だ。財政が破綻しているときには、歴史や伝統が創りだしたソフトを充実させ、強いコミュニティー意識を創造できれば、助け合いの心が強まり、福祉の向上に役立つ。低コストの割に大きな経済効果が発生するだろう。