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8月3日
米大手企業の粉飾と腐敗
ITバブルの夢物語
アメリカでは90年代後半にIT産業は成長性が高い夢のような産業だという見方が広がり、IT投資が急激に膨張し、バブル経済が発生した。光ファイバー網の総延長キロは1997年からたった4年間で5倍に増え、またブロードバンド(高速大容量)技術がめざましく進歩した結果、通信容量は約4百倍に増えた。しかし実際の通信需要は4倍にしかならなかったので、光ファイバーの通信網は瞬く間に過剰になり、現在の稼働率はたった5%である。この状態は80年代後半の日本で、土地需要の拡大と地価上昇が永続すると予想して、不動産企業等が土地を買い漁った時に似ている。
バブル経済は必ず株式ブームを生み出し、その株式ブームがバブル経済をさらに煽るものだ。アメリカの強力なIT企業は株式ブームに乗って増資を続け、膨大な低利資金を調達して設備投資を増やし、また規模拡大やIT関連分野への多角化参入を目指して企業買収を続けた。IT企業が設備投資や企業買収に積極的になれば、夢のIT産業で強力な立場を築くはずだという予想が株価をさらに押し上げた。その結果設備投資や企業買収がさらにスケールアップという循環が続いた。
通信網が過剰になると、大手通信企業でも赤字が拡大して倒産の危機が迫ってきた。さし当たって倒産を免れ、時間稼ぎをするのに最も適した方法は会計の粉飾だ。昨年の年末には、エネルギー産業における大手企業のエンロンが最新の金融技術を駆使して未曾有のスケールで粉飾を行っていたことが判明したが、この7月には大手通信会社のワールドコムがエンロンを遙かに抜く大きなスケールで粉飾していたことが明らかになった。
また会計の粉飾はIT関連企業だけではなく、商業銀行や投資銀行もまた貸し倒れを粉飾していた。どの企業の粉飾の場合でも、外部取締役はチェック機能を果たさず、また会計監査法人は見抜けなかった。さらにアナリストは企業に有利なレポートばかり書いていた。こうしてアメリカ経済の基礎を支える機構がそっくり腐敗していることが判明するとともに、株価が暴落を続けた。
これは日本でバブル崩壊したとき、それまで非常にクリーンだった銀行、日銀、大蔵省等の機関に粉飾と腐敗が浸透し、沢山の犯罪者が生まれたのと似ている。
市場経済への不信感
しかしアメリカ企業の粉飾について次の諸点は重要だ。まず世界の識者はアメリカの経済システムが最も優れていると信じている。日本でも証券市場の価格は正しい経済的判断の反映だと考えられ、「市場に聞け」という言葉が流行っている。しかしその市場は粉飾だらけである上に、粉飾を防ぐ機構がないことが判った。アメリカ経済を支えている市場経済システムは不正が多く、当てにならないことが判明した。また市場経済では数十年毎に必ずバブル経済が発生し、まだそれを防ぐ方法が見つからないことも判った。
第2にアメリカの株価がまだ高いことだ。日本の現在の株価はバブルが発生していなかった20年近く前の水準近くに戻ったが、アメリカの現在に株価(ダウ平均)はバブルがなかった8年前の3倍であるからさらに調整が進みそうだ。アメリカの証券市場が当てにならないとすれば、海外資本はアメリカから引き揚げるだろう、第3はITバブル崩壊はアメリカだけではなく、ドイツを始めとしてヨーロッパでも広がっている世界的現象であり。世界的な景気後退が起きるかもしれない。考えれば深刻な事態だ。
輸出に依存した景気回復を続けている日本経済の行方が暗くなった。景気対策と規制緩和・行財政改革を同時に進める必要性が一層高まった。