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10月21日
民営の静岡空港は有望だ
急激な国際的水平分業
中国を始めとする東アジア諸国の経済発展と、IT技術の目覚ましい発達によって、日本の産業構造はすっかり変わった。過去20年間の経済成長を支えてきた産業は、家電や自動車等の機械産業であり、それらの開発・設計、材料・部品の生産、組み立てなどはすべて国内で行われてきた。
しかし、中国では、高度な技術を必要とする作業を輸入した自動機械に置き換え、その前後の作業を安い賃金の人手に頼り、低コストで高品質な製品が生産できるようになった。部品工業や組み立て工業が日本から中国に移りつつあり、日本の機械産業には、開発・設計、試作等の重要部門だけが残りそうだ。
世界のIT産業では、もっと急激な国際的水平分業が広がっている。アメリカのパソコン産業を見ると、中央演算装置や基本ソフト等の高度な技術を必要とする部品の生産では、インテルやマイクロソフトといった企業が圧倒的なシェアを握り、高収益をあげている。これらの企業は、半導体、ディスプレイ、キーボード等の部品の生産や、パソコンの組み立てには関心が薄く、韓国、台湾、中国等の企業に任せている。
日本のハイテク産業でも、高級な技術と開発力を必要とする部門だけが国内に残り、多くの製造部門が中国等に移るという傾向が強まる一方だ。ハイテク企業の研究開発部門では中国人やインド人の研究者が多くなり、また大型研究所が北京や上海に置かれるようになった。産業は急速に国際化しつつある。
そうした動きに応ずるように、北京、上海、香港、ソウルには巨大な飛行場がつくられ、また、中国には主要都市を結ぶ高速道路網が完成した。日本企業の生産拠点が東アジアに移り、人の往来が活発になり、最近では中国の主要都市やソウルへの航空便はほとんど満席だ。北京や上海に日帰り出張するサラリーマンが多くなった。
大規模な国際空港の周辺の都市や町ではハイテク産業が発達しやすい。そこに最先端のハイテク情報を持った人達が集まり、多くの新企業が生まれる。企業は新製品を開発し、試作品をつくる。そこから、アジアや世界の生産拠点に設計図や注文内容が送られる。また重要部品が空輸され、専門技術者が行き来する。
ハイテク産業支える空港
ハイテク産業は今後国際化しながら、本県経済の成長をリードするに違いない。本県の経済規模はニュージーランドの2倍であり、日本を代表するハイテク産業の集積県だ。それを支える静岡空港は規模の大きい国際空港になるはずだ。静岡空港の問題点は東京や名古屋に近いことであるが、着陸料を引き下げ、さらに空港へのアクセスが便利になれば、成田空港や名古屋空港の顧客が利用するようになり、稼働率が上昇し、かつ本県の経済力が強まるだろう。
ほとんどすべての地方空港は、「空港事業が赤字、土産物屋が入居している空港ビルや駐車場の経営は黒字」という状態だ。静岡空港では、空港事業と空港ビル等を一体にした民間会社を設立して、空港ビルや駐車場の黒字を着陸料金の引き下げにまわすべきである。また物流施設の建設や通関事務の効率化等に英知を結集すれば、航空貨物の利用率が目立って向上するだろう。
県当局は、日本で始めての民営空港をつくるという意欲に燃えている。静岡空港株式会社のトップに素晴らしい経営者が就き、経営を完全に任かされることが判れば、本県は経済力が強いので、海外の航空会社や物流会社が出資や経営に関心を持つだろう。将来、静岡空港は民間地方空港の成功例として世界の注目を浴びる可能性がある。