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2002年
今こそ問われる銀行の眼力
貸付金利引き上げの時代に
日本の銀行は膨大な不良資産をもっている上に、収益率が低いという問題を持っている。欧米の銀行に較べると、いろいろな手数料の採算が悪い上に、最大の収益源である貸し付けの利ざやが少ない。欧米の金融機関に較べると半分ぐらいである。
不良資産を処理して銀行の信頼性を高めるためにも 収益力を高めることが必要だ。銀行は人減らし、ATMを始めとする機械化、店舗の縮小など合理化を実施した。しかし収益力向上の決め手は貸付金利の引き上げだ。銀行はそのチャンスがきたと思っている。
銀行は今までどの企業に対しても、あまり大きな金利差をつけずに融資してきたが、これからはリスクが大きい融資には高い金利を適用するだろう。例えば、収益率が優れ、自己資本比率が高い優良企業の貸付金利が1.4%とすれば、収益率や自己資本比率が悪い企業になるほど貸付金利は上昇し、遂に4%近くなるだろう。赤字が続いている企業は5%を軽く越すだろう。中小企業融資はリスクが大きい場合が多く、また1件当たりの融資額が小さいから手間がかかる。業績が良好でも3%近い金利がとられそうだ。
金利引き上げの理由は次の諸点にある。まず来年4月から流動性預金のペイオフも解除される。流動性預金の主たる預け手は企業であるから、あの銀行が危ないという風評が立つと、企業の資金運用係は職務上直ぐに預金を引き下ろすだろう。銀行は突然預金が引き下ろされる可能性があるから、それを防ぐために、収益力を高め、信用力を強める必要がある。
つぎに、景気は底を打ったから、これから資金需要が次第に増えそうだ。また収益が悪い企業はいくらか立ち直り、金利を引き上げても支払うことができるだろう。金融庁は金利引き上げによる銀行の収益力向上を期待している。
銀行経営はこれから難しくなる。今後も優良企業に対して金利引き下げ競争が展開するだろう。同時に少しでも危ない企業に対しては貸し渋りが続くだろう。というのは銀行は不良資産の増加を非常に恐れるからだ。しかしそこに銀行経営のチャンスがある。それは危ないと思われている企業の中から成長企業を見出すことだ。
産業支えるリスクかけた融資
ベンチャー企業は設立後しばらく赤字だ。思い切った大型投資を行った企業も赤字である上に、財務内容が悪化している。常識から言えば融資できない企業だ。もし眼力ある銀行員が経営者の素質を見抜き、その企業の成長性を予想できれば、競争する銀行がいないので、かなり高い金利で融資できる。その判断が正しけば、銀行は高収益をあげられる。
不良資産問題でも同じである。銀行にとって、どの企業が再生可能であるか、どの企業が貸付金の一部を棒引きすれば再生できるか、どの企業が再生不可能であるかという判断が最も重要であり、その判断の良否によって、銀行収益が左右される。
産業界や地域経済からみると、眼力ある銀行が存在すれば成長できる。しかし眼力を欠き、貸し渋り・貸し剥がしを行う銀行は産業と地域経済を潰してしまう。考えてみると、赤字企業からは高い金利をとり、高収益企業には安い金利というのは実に人情にもとるが、それによって獲得した収益によって自己資本を充実して、成長可能性があると確信した企業に対しリスクをものともせずに融資するというが本来の銀行経営というものだ。浜松にはトヨタ、ホンダを始め大小様々な優良企業が発生したという歴史がある。その歴史は多数の信用組合や信用金庫によるリスクをかけた融資によって支えられた。この歴史を守りたいものだ。