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2002年
消費回復へ強引な政策も
物価下落で生活は楽に
来日した外国人は、日本の経済が破局状態にあるにも拘わらず、街の風景が長閑であることに驚くそうだ。若者も老人もシックな品のある服装をしており、イタリアやフランスの高級ブランド商品がよく売れている。多くの人が生活に余裕があるように見える。
日本は深刻な不況下でも、多くの国民がゆったりした生活を送れる国になった。不況が長引くと、最大の被害を受けるのは社会的弱者である老人のはずだが、彼らは年金と老人医療制度に守られいる。不況によって物価が下がったので、彼らの生活はかえって楽になった。
また私たちは今までの生活が豊かだったので、生活費をかなり切りつめることが出来る。物価が下がった結果、昼食は500円以下で腹一杯になり、2000円もあれば帰りに一杯飲める。少しの距離ならタクシーに乗らず歩けば、贅肉が落ちて健康にいい。ユニクロ製品で身を固めれば、ブランド商品を買う余裕が生まれる。1人だけで生活水準を落とすのは寂しいが、有り難いことに日本は平等国家だ。みんなで揃って落とせばすぐに慣れ、少しも苦痛ではない。
物価が下っている時には消費者は買い急がない。現在は誰でも貯蓄に心がけている。企業は遠慮会釈なくリストラを実施しているから、何時職を失うかもしれない。財政が破綻しているので、将来、税や社会保障負担が増えるに違いない。消費者は実に健全であって将来に備えて貯蓄に励んでいる。
こうした結果、消費が減少し、需要不足になって物価がもっと低下するのである。デフレスパイラルが止まらない。企業は日本を脱出して、中国に工場を移転し、中国市場や世界市場で売り上げを伸ばしている。日本の産業は空洞化する一方だ。
このままでいくと、今後かなり長期にわたって消費が縮小しそうだ。その時における最大の問題は若者の失業が増大することだ。現在、職がない若者はフリーターになって、その日暮らしの生活を送っている。その数は300万人近いと云われている。技能は長期間同じ仕事に就き、現場で訓練されて身に付くものだ。技能を身につければ生活が安定する。ところが、フリーターでは何年勤めても同じような単純仕事の繰り返しであって技能が磨けない。若者の人生が台無しになるだけではなく、日本経済の基礎が緩んでしまう。
低迷にうろたえぬ国民
そう考えると、兎に角、消費を拡大して、景気を回復させ、失業を無くさなければならない。そのためには、可成り強引な政策であっても効果があれば実施すべきだろう。例えば、消費税の引き上げと所得減税を同時に実施すべきだ。政府が1年後に消費税の10%に引き上げを発表すれば、消費者は引き上げ前に買うとするから、駆け込み需要が発生するだろう。その時、所得税が引き下げられていれば、消費は確実に増大するはずだ。
その結果、消費財が物不足になり、物価が上昇し、買い急ぎ需要がさらに続く。そうなると企業収益が増加し、設備投資が上昇するはずだ。消費税が引き上げられてしまうと、消費の反動落ちが発生する。日銀は景気上昇の勢いを保つために金融緩和政策を持続しなければならない。また政府は設備投資減税を実施して、設備投資を刺激する必要がある。それは景気の持続的な成長のためだけではない。日本の生産設備は、アメリカや韓国に較べると、古くなっているので、大型の設備投資が必要だ。
日本は住み良い国になったので、国民は経済の長期低迷にも狼狽えなくなった。その気の緩みが経済を一層悪くしている。