静岡新聞論壇

2005年 

外国人労働力の導入を

少子化で生産労働人口激減

少子化の結果、2007年から日本の人口は減少し始める。また12年から、団塊の世代が続々と65才に達して生産労働人口(18才から65才まで)から離脱し、老人人口に加わるので、18年までの6年間で生産労働人口は600万人も減り、老人人口は300万人も増える。その後、老齢化傾向はスピードが衰えながらずっと続き、50年ごろには、人口の3分の1が老人になると予想されている。

若者が激減し、老人が激増すれば、当然のことながら、経済成長力は目立って低下し、かつ、壮年層の税負担が年ごとに重くなり、日本人の生活水準はじりじりと低下していくに違いない。

これを避けるためには、まず、定年制を廃止して、老人も働き、賃金は現役時代の20%ぐらいで我慢するという方法がある。年金があるから、生活には困らないだろう。また、頻繁にやって来る休日を減らして、年間の労働時間を多くすることが必要だろう。しかし、少子化傾向が改まらない限り、こうした方法だけ防ぎきれない。

そうなると、外人労働力の導入が最も重要な対策になるだろう。現在、80万人の外人労働者が働いており、自動車工業などの製造業の底辺を支えている。またウエイトレス、ホステス、廃棄物処理場の選別作業などの分野でも、外国人が目立っており、主として外国人が、日本の3kの作業を引き受けていると言えよう。浜松は工業都市であるから、2万4000人の外国人が働いている。

アメリカでは、毎年、300万の移民労働者が流入し、新技術や新製品の開発は、移民の中国人、インド人、ロシア人などによるものだ。つまり、良質な移民も多いのである。その結果、4%近い経済成長を続け、世界経済をリードしている。

日本でも、優れた資質を備えた外国人を受け入れたいものだ。大企業の本社、工場現場、研究機関等で、外国人が中心的なマンパワーとして広く受け入れられ、業績をあげれば、日本人と同じように、プロモーションしているという評判が世界に広がれば、優れた素質の外国人が続々とやってくるに違いない。

そうなれば、日本経済は確実に成長するはずであり、彼等が日本に永住して税金を収めまた、健保や年金に加入してくれれば、財政や年金・健康保険の破綻問題はたちどころに解決されるだろう。

賃金や昇進システム整備

ところが、現在の日本企業では、外国人はトップは勿論のこと、役員にも昇進しにくい。大学でも外国人教授が少なく、日本文学等日本に関わる講座は日本人教授によってほぼ独占されており、日本文学のドナルド・キーン、明治維新史のE・H・ノーマン、日本文化の李御寧を始めとして、多くの外国人研究家が活躍したという実績が無視されている。

先月下された外国人・地方公務員の昇進に関する最高裁判決によって、多くの地方自治体は「公権力を行使する職務」を広めに解釈するから、外国人の昇進が不可能になり、日本の労働市場は閉鎖的だという印象を世界に与えるだろう。

生産労働人口の激減をカバーするには、今後10年間で700万人ぐらいの外人労働者が必要だ。現在200万人の外国人が住んでいるが、20年後には、日本の人口の10%近くを占め、現在のヨーロッパの水準になるだろう。

良質な外国人労働力を輸入するためには、勤労意欲を刺激する賃金や昇進のシステム、社会保障制度、優れた子弟の教育環境等を整え、日本の魅力を高めなければならない。また欧米諸国から異民族と共生する方法を学ばねばならないが、国内でも、外人力士によって人気を保っている大相撲という手本がある。

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