静岡新聞論壇

2005年 

高まる韓国の反日運動

日本政府の”冷たい主張”

韓国では、島根県議会における「竹島の日」条例の決議を契機として、反日運動が盛り上がった。今後も、反日運動が頻発するのは避けられない。その理由はつぎの3つに要約できる。第1は、韓国という国の誕生と深く結びついている。朝鮮半島の歴史は日本よりも遙かに古いが、韓国は誕生後60年も経っていない新しい国だ。独立は、そもそも、アメリカやベトナムのように、武力で戦いとるものであり、独立戦争を通じて、国民の自覚が高まり、強い国家が生まれる。

ところが、韓国は、日本が降伏した時、敗戦国扱いされ、実質的にはアメリカの軍政下に置かれた。韓国の統治権はまず朝鮮総督府からアメリカ軍に譲渡され、その3年後に国連の監視下で選挙が行われ韓国が生まれた。そうした経緯が、1950年代の日韓国交正常化交渉における日本政府のつぎのような冷たい主張に結びついた。

日本は、整然とした統治するシステムを無償で、韓国に譲渡したのであるから、賠償を払う必要はない。それどころか、日本が築いた鉄道、道路、電気・水道等のインフラが整備され、日本人と同じように、当時としては高い教育水準を享受できたことを感謝すべきだ。今後無償・有償の経済協力はするけれども、それは賠償を意味するものではない。

これに対して、韓国人は次のような対日批判を展開してきた。朝鮮半島は、中国から何回となく侵略され、大虐殺に泣いたが、半島全体をそっくり征服し、植民地にした日本だけである。植民地体制下で苦しみ、日本との同化政策によって、民族の自尊心が踏みにじられた。日本人には、これに対する罪意識がまるで欠けている。

第2に、韓国の本物儒教の立場から見ると、日本の儒教は偽物であって、例えば、来日した韓国人は、誰でも、電車の中で、年寄りに席を譲ろうとしない若者が多いのに驚いている。日本人には敬老の気持ちが消えた。そんな低俗な国に植民地支配された口惜しさを、反日運動によって晴らすのは当然だ。

第3に、日本は、北朝鮮を外交的に激しく攻めて国際的に孤立させ、朝鮮民族の願いを裏切って、南北朝鮮の分断を永久化しようとしている。もし南北朝鮮が統一されれば、将来、人口7000万人の核武装した大軍事国家が生まれ、アジアの軍事的バランスを崩壊させる可能性がある。世界の主要国も南北分断の固定化を狙っている。

事実正確に伝える努力を

植民地時代に、韓国人はかなり日本化され、結局、自力で独立を戦いとれなかった。その負い目を振り払い、国の尊厳を守るためには、どうしても激しい反日運動が必要だった。つい最近まで、日本化を恐れて、映画を始めとした日本の文化的作品の輸入を禁止してきた。

韓国のマスコミは、日本の「進歩的」マスコミや文化人の協力を得て、植民地時代に受けたいろいろな差別を取り上げ、謝罪と個人に対する賠償を要求して反日感情を煽ってきた。竹島問題は反日運動を盛り上げる好個なテーマである。大げさに云えば、韓国にとっては反日運動が国家存立の条件になっている。

日本はどうすれよいか。まず、韓国人にも日本人にも、事実を正確に伝えるように努力すべきだ。例えば、韓国人の個人に対する賠償は、日本から経済協力資金を受け取った韓国政府が支払う約束になっている。つぎに年間130万人に達する韓国人の旅行者を暖かく迎え、また韓国の優れた人材が日本で活躍しやすい環境を整え、また日本への留学や修学旅行をもっと増やしたい。そうすれば、反日の人口が少しずつ減るだろう。

歴史問題の日韓共同研究は必要であるが、インド、タイ、アメリカ等の中立的な立場の歴史学者を加えるべきである。

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