静岡新聞論壇

2005年 

テレビとインターネット

メール文体の人気小説

IT技術は、私たちの生活に入り込み、生活を変えている。携帯電話のサイトに連載小説を発表し、読者からのヒット数に応じて、ストリーを変えて、読者を掴むという新しいタイプのベストセラー作家が現れた。また、2チャンネルの掲示板によるやり取りを纏めた「電車男」は200万部売れた。

10代や20代前半の若い世代が熱心に小説を読むようになり、その結果ミリオンセラーが生まれている。その小説の特色は、横書き、簡単な文体、名詞止め、多様な擬音等、携帯電話のメールと共通している。若い人は、メールによって文章に慣れ、読書スピードが速まった。携帯電話に感情をメモり、それをもとにして和歌を作り、携帯で投稿する若い詩人が増えている。

10才代や20才代前半の若者には、携帯電話が必需品である。20才代から初老までの人にはパソコンが必需品になり、ニュースを専らインターネットに頼る人、新聞やテレビで知ったニュースを深く知るためにインターネットを使う人、テレビや新聞をインターネットを通じて見ている人等、いろいろな方法で利用されている。

インターネットの広告収入がラジオを抜き、テレビ、新聞、雑誌に次ぐ地位を占め、インターネットショッピングやオークションは、小売り総売上高の1%に達し、多くの個人投資家はインターネットで株式を売買している。ヤフーや楽天は、近くインターネットによる野球放映を開始するので、ファンは好きな方角から随時、自由に選んでネット観戦できるという。

インターネットは、このように私たちの生活にじわじわと染み込んでいる。ヤフー、楽天、ライブドア等のインターネット関連企業は、攻勢の経営姿勢を取るのは当然だ。テレビとインターネットが結合すると、例えば、ドラマ・ショッピングが可能になる。ドラマの人物の衣類、靴、家具、料理等を画面でクリックすると、価格や商品の情報がアウトプットされ、すぐに購入できる。この様な番組にはCMは入らないから見易い。インターネットが小売りに占める地位は飛躍的に高まるだろう。

技術革新を味方に勢いづく

これに対して、既存メディアの中心であるテレビは、免許権に守られて、内輪の視聴率競争に終始しており、革新が見られない。例えば、内外の文化・風土を紹介する番組では、タレントがナビゲーターとして登場し、風景よりもタレントの顔が頻繁にクローズアップされ、地元の料理を食べては「美味しい」と言い、素晴らしい景観を眺めて「うあー、きれい」と叫ぶだけだ。さもなくば、取材班の苦労話がくどくど続く。

野球中継の解説者は、「勝つためにはまず塁に出ることです」といった無意味な説明ばかりだ。また文化性ある番組をタレントを軸にしたクイズ形式に変えられたり、重要な問題の検討を素人ばかりのワイドショウにすり替えられている。NHKでは番組のCMを増やし、また同じ番組をいろいろなチャンネルで順繰りに放映している。視聴料の不払い運動が広がるのは当然である。

フジテレビの会長は、毎日のように放映されるテレビ会見の演出が拙く、かつ自己弁護に終始したので、女性と若い男性の支持を失った。NHKの海老原前会長もテレビ出演をめぐる問題が命取りになった。つまりテレビ業界のトップがテレビ出演によって視聴者を敵に廻した。これに対して、堀江さんは、生意気な態度を嫌う人がいるが、技術革新を味方にして勢いづいている。時代の流れといえる。

ページのトップへ