静岡新聞論壇

2005年 

自民と民主、改革の手順

「郵政」か「国民年金」か

自民党と民主党とは、深刻な危機感を持ち、大胆な改革を実施しなければ、将来、日本経済は破綻し、国民生活は窮乏化すると感じている点は同じだ。小さな政府にし、地方自治体に権限を移譲して、分権型の社会をつくるべきだ。無駄な財政支出を削減し、民間企業でできるものは、すべて民間企業に任せて日本経済を効率化しようと考えている等の諸点も同じだ。

差は何かと言えば、改革の手順である。自民党は、郵政改革を実施して、特殊法人に流れる資金の根本を絞れば、最も無駄が大きい特殊法人を整理できるはずであり、それによって、官僚機構と既得権益者との関係の1部が断ち切れれば、改革の勢いが全分野に拡大するに違いないと判断している。

これに対して、民主党はつぎのように考える。郵政公社が発足早々であり、将来、民営化しなければならないが、今年中に急いで実施するという問題ではない。それよりも、国民年金を改革して、国民の不安を減らし、また財政支出の大幅なカット、公務員の削減、平等な税制等によって、財政再建に取り組むことがもっと重要だ。

民主党は、幾つかの素晴らしい政策を提案している。例えば、国民年金の破綻を防ぐためにその財源を消費税にかえ、将来、すべての老人が月額7万円の年金を確実に得られるようにする。また国民総背番号制を導入して、すべての国民の所得を正確に捕捉して、自家営業者の脱税を防ぎ、税負担を平等にするという。

小泉自民党のヒットは落下傘の刺客だ。国会議員は、地域の利害を守るのではなく、大局的な足場に立って、国政を考える人々であるはずだ。地方分権の時代になると、地域経済における経済成長や福祉向上の政策を決定するのは県会議員や市会議員の仕事である。地域の既得権者と全く関係のない人を、国会議員の公認候補にするのは、地方分権を先取りした姿勢と言えよう。もっとも、刺客の多くが落選し、落下傘候補は1時的な現象になるかもしれない。

岡田さんの演説には、真面目な人柄が溢れ好感が持てるが、党内に労働組合の代表等、改革反対の勢力を抱えており、本当に改革できるか不安だ。その中には、郵政民営化に反対する人や、かって国民総背番号制を徴兵制度に繋がると主張するグループに属していた人もいる。

時には”独裁者”も必要

小泉さんの人気は、派閥政治を潰し、郵政改革反対派を追い出し、自民党を改革したことにある。つまり郵便事業関係者を始めとした既特権をもった集団に対して、投票と交換にその既得権を守るという取引を断ち切ろうとしていることだ。小泉さんには独裁者の臭いがするが、大改革の時には、独裁者が必要であり、任期が短かければ、その欠陥が現れないだろう。

小泉内閣の時、銀行の不良資産問題は解決し、銀行は融資する能力を回復した。企業はリストラを続け、収益がでる体質に変わり、日本経済は強くなり、公共事業をかなりカットしたにも拘わらず、景気が上昇を続けている。しかし、企業は非採算部門を切り捨て、新規採用を抑えた結果、多くの若者達は、就職ができず、その日暮らしのフリーターや働かずに過ごすニートが激増した。これは本人の不幸であるだけではなく、日本にとっても大きな損失であるが、小泉自民党にはその対策が欠けている。

半世紀前の共産党は、天皇制廃止と自衛力の維持を主張した革新政党だったが、今や増税に反対し福祉の充実を主張する保守政党に変わった。社民党はかって北朝鮮を友好国と考え、拉致問題を真面目に取り組まなかったので、平和国家論には説得性がない。

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