静岡新聞論壇

2005年 

中国の経済成長と政府統制

アメリカ的ルールに警戒

中国経済は目覚ましい発展を続け、遂に実質GDPは世界の13%を占め、日本の7%を軽く抜き去り、アメリカの21%に迫っている。中国製品は、世界市場で、DVD再生機90%、ノート型パソコンやオートバイ50%、化学繊維40%、粗鋼20%という凄まじさである。自動車は7%に達した。

経済発展すると、軍事費がそれほどの大きな経済的負担にならないから、今や、中国はアメリカ、ロシアに次ぐ軍事大国になった。9万人のミサイル部隊を持ち、最近では海軍力を増強している。中国は東アジアで、アメリカと経済的覇権を争っている。それは経済ルールの正当性に関する争いであり、アメリカはアメリカのルールを押しつけて、中国の軍事的・経済的膨張を押さえ込もうとしている。

日本はバブル経済崩壊後に、アメリカのルールを受け入れ、金融を完全自由化した。それとともに、間接金融から直接金融中心のシステムに変わった。銀行は経営危機の取引先企業を救済しなくなった。企業が倒産して、再生ファンドがそれを安く買い取って、手荒な解体・再生作業を実施するのである。

長期雇用システムが崩れ、従業員は不安定な立場に置かれ、企業忠誠心が失われた。アメリカ的なルールの下では、アメリカ企業が強くなるのは当然であり、長銀等の銀行や有名ゴルフ場を次々に買収して、大きな収益を挙げている。

中国には選挙制度がない。また政府は自由な経済活動を認めず、様々な規制を加えている。そもそも土地が国有化されており、また国有企業では共産党が人事に介入することがあり、経済取引でも権力が巾を効かせている。政府の統制下で、市場経済が導入されたので、高成長経済に伴う混乱を最小限に抑えることができた。

中国で、アメリカ的な自由な経済活動や行動を認めると、日本やアメリカ等の外国企業に経済の基盤を握られ、同時に、貧しい人達が自由に豊かな地域になだれ込み、また貧しい民族が不満を爆発させて反乱を起こし、国の存立が危うくなる可能性が大きい。今後、相当の期間、アメリカ的なルールの導入を防がなければならない。

国際的世論意識し参拝非難

中国は軍事大国のアメリカと対決できないから、パキスタン、イラン、フランス、ロシア、北朝鮮、ミヤンマー等アメリカの覇権を嫌う国々と関係を深めている。アメリカに協力的であり、また国連の常任理事国になって東アジアにおけるプレゼンスを高めようとしている日本なら、やっつけるに値するし、やっつけやすい。小泉首相の靖国参拝は絶好のチャンスだ。A級戦犯が祀られている靖国神社への参拝を種にすれば、日本をどれほど酷く叩いたとしても、国際世論から非難されないだろう。オリンピック、万博といった国際的行事を控えている時としては、絶好争点である。

もし、小泉首相が参拝を辞めれば、中国は「肩すかし」を食い、歴史教科書や領土問題では、内容や理屈の上から云って、靖国ほど簡単に非難できないから、残念がるだろう。また日本の国内でも、A級戦犯の合祀を疑問に思う人が少なくないから、小泉支持率が下がるとは思われない。残念ながら、小泉さんは依怙地である。

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