静岡新聞論壇

2004年 

国民年金の問題点

恵まれた人には関心なく

7名の大臣や民主党の幹部から共産党の議員までが、国民年金の保険料を一時期収めていなかった。これによって国民年金の問題点がよく解った。

国民保険に加入できるのは役人とサラリーマン以外の人、つまり、自家営業者、タレント、自治体の議会や国会の議員、パート、フリーター、失業者などであり、その数は2200万人である。

しかし、恵まれた人達は国民年金に関心がない。サラリーマンは老後には所得がゼロになるが、自家営業者は小売業、飲食店、診療所などを経営しているので、65才過ぎても仕事ができる。そのため、関心は老後の年金より、事故にあった場合に生活を守ってくれる保険にある。

有名タレントは、現在収入が多いので、老後の最大毎月7万円の年金について関心が薄い。自治体の議員や国会議員は、手厚い議員年金があり、議員を10数年もやれば、豊かな老後が保障されるので、国民年金を貰っても有り難いとは思わない。

これに対して、恵まれない人々はどうか。10年前には、国民年金は自家営業者が過半を占めていたが、今では、激増したフリターやパート等、低所得者が過半を占めるようになった。月当たり所得が10数万円であって、ぎりぎりの生活を送っている人が多い。彼等にとっては、国民年金の保険料(1万3300円)は非常な負担であり、老後の生活を考える余裕がない。現在、保険料を払いたくても払えない人が500万人もいる。その大部分は、生活保護を受けたり、失業中であるから、保険料を免除されている人達だ。

国民年金は保険料が集まらないので、破産状態にある。低所得の人には未納が多いが、社会保険庁の人が、いちいち徴収に出掛けると、受け取る保険料が僅かである上、集金した金額は将来の保険給付額として支出されるので、徴収の人件費コストをカバーできない。徴収しない方が、国民年金の赤字が少なくなる。また、年金システムが複雑であり、例えば、厚生年金加入者が国民年金に移る時には、届け出が必要だが、つい忘れてしまう。福田さんも、菅さんも、うっかりしていた。

こうして考えると、そもそも国民年金は成り立たない制度であり、これを廃止して、職業に関係なく加入できる一元的な制度をつくるべきだという民主党や小泉首相の主張は正しい。

実現させたい新制度創設

それを実現するためには、民主党の主張のように、①国民年金に変わる消費税を財源とした基礎年金制度と、②所得に比例した保険料を支払い、支払い保険料総額に比例した給付額を受け取る厚生年金のような制度とを、創らなければならい。その場合、所得が増えるにしたがって、基礎年金の給与額が減少し、高所得層はゼロになる。

こうした年金制度を創るには、すべての国民の所得を正確に捕捉することが必要だ。自家営業者やタレントの所得を、サラリーマンと同じように正確に捕捉するには、すべての取引を捕捉する国民総背番号制を導入しなければならない。このような厚生年金型(現在の保険料は、所得の13.58%)の制度では、自家営業者等の保険料は、どのような特別な措置を講じても、相当に跳ね上がるだろう。勿論、それに応じて、給付額も激増するが、多くの自家営業者は65才以上になっても収入があるので、高額な年金制度は不必要かもしれない。

国民総背番号制や保険料の引き上げには、集票能力が強い自家営業者は強烈に反対するに違いない。しかし、年金を一元化するには、それが必要だ。民主党・自民党・公明党の年金一元化の合意は、それを実現しようと決意しているはずである。もし、それが菅さん等の未納問題を逃れるための政治的駆け引きだったとすれば、絶対に許されない行動だ。

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