静岡新聞論壇

2004年 

韓国の文化、政治、経済

「遠い国」から「近い国」へ

韓国では、「フユソナ」、「ヨンサマ」という日本語がそのまま通用しており、韓国の識者には、日本における韓国映画のブームは、奈良時代の渡来人や、江戸時代の朝鮮通信使と同じように大きな、韓国から日本への文化移転だと評価する人すらいる。

文化交流は国と国との関係を好転させるものだ。一昨年のワールド・カップ・サッカーでは、日本各地で大型テレビに群がった若者達が、韓国ティームを応援したというニュースは韓国人を感動させた。現在、日本の文化・風習の担い手である中年女性が韓国映画ファンになり、「フユソナ」のロケ地は日本の中年女性で溢れている。

こうした結果、韓国人の対日感情はウソのように良くなり、日韓両国は「遠い国」から「近い国」に変わりつつある。毎日、1万人が両国を訪れ、羽田・金浦の航空便は満員だ。NHKは、「冬のソナタ」、「美しき日々」に続いて、日韓国交40周年に当たる来年には、年宮廷料理人の生き方を通じて、李王朝の歴史を画いたドラマの放映を予定し、また韓国における「のど自慢大会」を計画している。

ところが、日韓両国の親密化は一直線には進まないようだ。韓国の政界では、有力政治家達の父親が日本の植民地時代に、日本に協力したかどうかが重い問題になり、政局を左右しそうだ。事実の掘り起こしが進められている。来年は「李舜臣」の大河ドラマが放映される予定だ。そこでは、秀吉軍の蛮行と敗北の生々しい場面が延々と続くに違いない。

韓国経済を長期的に展望した時、最大の問題は出生率の低下であり、最近では日本を下回り、1.1名に落ちた。また経済発展とともに儒教社会が崩れ、大家族で助け合う風習が弱まった。そのため1980年代から、親子心中が激増している。それ以前には、子供が残されても、兄弟・親戚が必ず面倒を看てくれるという確信があったので、親子心中がなかった。

出生率の低下や儒教の崩壊が進むとともに、北朝鮮が重要な国になってきた。そこでは出生率が高く、労働力が慢性的に過剰であり、儒教の風習が残っている。もし南北統一が段階的に進めば、韓国の国民にとってメリットが大きい。

政治力学上の難しい立場

しかし、世界の大国は南北分断の恒久化を意図している。アメリカと日本は、韓国を味方に組み込んで、北朝鮮と対峙しようとしている。中国は北朝鮮を支援し、ロシアはアメリカの影響力が北朝鮮まで伸びるのを恐れて、南北分断の固定化に努めている。

最近、中国の社会科学院が「高句麗が中国の地方政権だった」という研究報告を発表し、韓国政府は、これに激しく抗議している。中国政府はチベットやウイグル等の周辺地域が歴史的に中国の一部であり、独立の権利がないと主張してきた。その考え方が朝鮮半島にまで拡大するかもしれない。韓国政府が激怒するのは当然である。

韓国の歴史は、絶え間ない侵略と外国勢力が介入した内戦の連続だった。古代や中世の韓国は世界の最先進国だったが、現在、文学作品は10数の詩歌しか残されていない。それは、戦乱で消失したり、政権交代の時、廃棄されたりしたからだ。

現在の韓国は、世界12位の先進工業国である。しかし、日本、中国、ロシアという経済大国や軍事大国に囲まれており、また覇権国アメリカの影響下に置かれ、国際的な政治力学上、難しい立場にある。「反・北朝鮮の日本と緊密化するのは問題であるが、北朝鮮と和解した日本とは緊密化すべきだ」と考える韓国人が増えている。当然な趨勢といえよう。

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