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8月7日
財政支出と官僚のモラル
物が売れず節約進む悪循環
景気は次第に悪くなっている。今までの景気を支えてきた輸出が不振になるだろう。それはアメリカ経済が悪化しているからだ。アメリカの連邦準備制度理事会(FRB)は、3月に大手証券会社に実質的な緊急融資を行い、7月末には、政府が住宅金融公社への公的資金投入を決めた。
住宅金融公社は2社あり、住宅債権にかかわる金融商品に膨大な資金を投入しており、その金融商品が値下がりしたため、経営破綻の状態である。世界の金融市場では、住宅金融公社の社債は国債並みの安全な証券と見なされ、世界の主要銀行が所有している。もし、住宅公社が破綻すれば、世界の金融市場が混乱し、金融恐慌が発生しかねない。この緊急措置によってアメリカ経済は第1の危機を脱したようだ。
しかし、地価が低下し続けており、その結果、金融機関の不良債権が増えたので、「貸し渋り」が強まっている。地価は相当下がったが、まだ8年前より70%も高い水準にあるから、さらに下るだろう。金融機関の貸し渋りが続き、景気が悪化しそうだ。
中国やインドの経済は、原油価格の上昇、対米輸出の減少、土地バブルの崩壊等の理由によって不振である。日本経済の輸出環境は非常に悪くなった。
国内経済を見ると、原油価格や食料品の価格上昇が、最終製品価格に転嫁されている。企業は、それに伴う売上げ高の減少を人件費の圧縮によってカバーして、利益を守ろうとしている。すでに失業率は4%に達し、実質賃金は前年比で1%も低下した。
私達は節約を始めた。景気は、1、物が売れない、2、企業は生産を縮小する、3、賃金が削減される、4、節約がさらに進むという悪循環に入りそうだ。不況が進むと、税収が減り、財政赤字がさらに拡大して、国債が一段と増えるだろう。もし財政支出を削減すると、景気が悪化する。現在は、財政が破綻しているが、さらに酷く破綻するのを避けるために、財政刺激策が必要な時期になった
この政策では、政府の見識が問われる。道路投資は、短期的に経済を刺激するが、長期的な観点に立つと不必要だ。これから壮年の人口が減り、老人人口が増え、20年後には自動車を運転する人口が30%近く減り、主要道路はガラガラになるだろう。
智恵絞り論議積み重ね
原油の高価格時代になり、また地球には炭素が増えすぎたので、電車、バス、自転車が重要な交通手段になるだろう。自転車の専用道路や専用レーン、多数の駐輪所、自転車積み込み可能なバスや電車が必要である。
都市構造が変わり、都市の中心部や近郊の駅周辺に、人口が集中している。それとともに、医療施設、介護施設、公共施設の稼働率が向上して、生活コストが低下するはずだ。街には樹木を植え、水の流れを創り、ベンチを多くしたい。それがコミュニティー意識を育む基礎になる。高齢化社会の都市づくりが進まなければならない。
政府は、不況下で失業したり、日雇いで働いている人達に対して、生活を保障しつつ職業訓練をする制度をつくるべきだ。技能を欠いた人が多くなれば、それだけ日本経済の生産性が低下し、かつ賃金格差が広がる原因になる。新興国が追い上げてくるので、彼等に技能を与えるのは時間との競争である。
ところで、問題は、政府が国民から信用されていないことだ。国民は、財政支出を増やしたならば、官僚が族議員と結託して、省益や集票のために、無駄づかいするだろうと疑っている。財政刺激政策が必要な時であるからこそ、政府は無駄を省き、かつ官僚の規律とモラルが向上する制度改革が必要だ。そうなれば、景気が回復した時、国民は消費税の引き上げに賛成するだろう。