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6月26日
NHKは文化担う自覚
視聴者の受け狙う番組
株式市場におけるインサイダー取引は、市場経済の基礎を揺るがす行為だ。市場参加者は同じ条件で株式を売買するのであって、誰かが、しばしば、株価の影響する情報を秘かに入手して、売買利益を得ていたならば、他の投資家は次第に市場を信頼しなくなる。インサイダー取引が増えれば、やがて株式市場は崩壊する。
偽札が増えると、紙幣が信用されなくなり、貨幣経済の根幹が揺すぶられる。インサイダー取引は偽札つくりに匹敵する犯罪である。経済ジャーナリストはインサイダー取引を見付けたならば、広く報道し、糾弾すべき立場にあるから、これは警官が泥棒したようなものだ。
NHKの会長が、うるさ型の評論家(立花隆、嶌信彦)の批判を聞くというNHKテレビの1時間番組に出演し、視聴者の前で厳しい批判に耳を傾け、再発を誓ったのは潔い態度である。しかし、それだけで、NHKの欠陥が改まるだろうか。NHKは、単に視聴者に受ける番組をつくる機関ではない。視聴料を取っているから、正確な情報を報道するだけではなく、日本の文化を高める役割を担っているはずだ。
しかし、実際には、民放との視聴率競争に割って入っている。海外のプロ・スポーツや映画の放映を多くし、まるで有料テレビのWOWWOWのようだ。海外の紀行番組では、直ぐに「ご案内役」のタレントが「わーすごい」と叫ぶだけの役割で登場する。視聴者は、その國の風俗や歴史を見たいのであるが、タレントの姿ばかりがクローズアップされて、肝腎の風景が遮られてしまう。花火や夏祭りの実況でもそうだ。本来ならしっかりした学者や専門家が映像を妨げないように解説すべきだ。
パリの街を放映し、アナウンサーが、この番組はライブですと叫ぶといった特別番組は、ナンセンスの極みだった。プラネット・アースという名番組も、突然、タレントが現れ、無意味なことを話し、興ざめだった。
また、折角名画や天才画家の逸話や特色を紹介する素晴らしい番組になるはずの番組を、タレントを混ぜた、迷宮美術館といった詰まらないクイズ番組に仕立ててしまう。これに対して、誰も顔を出さない「世界街歩き」は優れた番組だ。
国民は無教養ではない
また、細かい心配りが欠けている。クラシック音楽の放送が減り、その組み合わせが雑になった。最近、長いオペラの放映が増え深夜まで続いている。しかし、ハイビジョン、衛星、FMで短い期間に続けて同じオペラを放映・放送するといった具合で細やかさをかけている。
NHKのドキュメントは悪くない。しかし、フランスやアメリカに較べると、情緒的であり、世界で始めてNHKのカメラが入ったとかいう宣伝と、解説が多すぎる。輸入ドキメントには、優れた作品がある。フランスの「渡り鳥」は、何も語らずに、環境破壊を痛烈に知らせてくれる。
私は、NHKの関係者に、番組に文化性がない文句を付けると、「国民がそれを望んでいるからだ」という返事だ。彼等は国民は無教養だと信じ込み、レベルの低い番組をつくり、時々、歌舞伎や能といった伝統芸術や、最先端のデジタル映像作品を何人かで解説するだけという番組で満足しているようだ(デジタル・スタジアム)。
今や「蟹工船」や「カラマーゾフの兄弟」がベスセラーになる時代に移った。NHKは、日本を世界1の文化國にする一翼を担うという意気込みを持ってもらいたいものだ。国民は、決して、NHKが考えているほど馬鹿ではない。