静岡新聞論壇

3月6日

グローバル時代の安全対策

有害物質含む食料輸入

経済がグローバル化すると、人、物、金が国境を越えて自由に動き、その結果、世界経済や日本経済が成長し、国民は豊かになるものだ。

日本と中国の関係でみると、日本企業は中国に対して、高級な機械設備、部品、素材を輸出し、また、中・下級技術の製品を中国の現地工場で生産して、収益をあげ、成長している。東京のデパート・高級店・ホテルやリゾート地は、中国人観光客によって、潤っている。

また、私達は、賃金が上昇しないのも拘わらず、中国製の安い衣類、電機製品、食料を買って豊かな生活を営み、時々、中国旅行に出掛けるのである。
しかし、グローバル化には、光ととも、影がある。中国との競争に敗れて、廃業・倒産する企業が多い。外国人労働者が増え、地元住民との摩擦が発生し、時には悪質な犯罪が起きている。有害物質を含んだ玩具や食料が輸入されている。

食品についていえば、中国は格差社会であり、農民の教育水準が低く、また消費者が安全について五月蠅くないから、過剰な農薬散布の野菜が多いに違いない。国内では、それが問題にならないのは、多分、過剰農薬の野菜に対する抵抗力がついていること、中毒に罹っても原因を追及するシステムを欠いていること、普通の食中毒が多いので目立たないこと等の事情があるからだろう。

中国の検疫当局は、今回の冷凍餃子事件について、原因が中国側にあると認めたくない。国内では、原則として、中毒問題が発生していないことになっているのに、輸出食料でそれを認めるのは筋が通らないからだ。もし、認めれば、国内の検疫体制を強化しなければならない。

欧米諸国は、これは中国で如何にも発生しそうな事件だ。しかし北京オリンピックでは、中国政府が食の安全に全力投入するから、中毒問題が発生しない考え、関心が薄い。中毒の原因はうやむやで終わりそうだ。

それだからと言って、日本が門戸を閉じるわけのはいかない。最早日本経済は中国なしには成り立たない。中国は、アメリカと並ぶ最大輸主先であり、また私達の日用製品の多くは中国製品だ。

小さな選択の積み重ね

日本人にとって、重要な対策は消費者が中毒事件を起こした中国企業やそこに委託生産した日本企業をよく記憶しておき、当分の間、絶対に買わないようにすることだ。それによって、中国企業に対して、もし有害製品を日本に出荷したならば、日本市場を半永久的に失うことを認識させることができる。
また中国企業に委託生産した日本企業に対しては、農業の現場まで出掛け、安全性をチェックするという作業を省略したならば、倒産の危機が訪れるという緊張感を与えるのである。

中国における食料生産は危ないと考えた企業は生産地を他国に移したり、国産品を利用したりするはずだ。そうなれば、消費者の選択の自由が広がり有り難い。安さを求める消費者は中国製の食品を買い続け、安全性を求める消費者は、価格が中国製の数倍もする国産品を愛好するだろう。
政府が、検疫を厳しくすべきだという意見がある。確かにそれも必要であるが、それだけでは油断がならない。C型肝炎や、あたごと衝突した漁船の事件では、政府や海上自衛隊を信頼していると、自らの生命が危うくなることが判った。私達の小さな選択の積み重ねこそ、グローバル時代における安全な国をつくるのである。

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