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7月10日
米中の過剰消費と貯蓄
世界にあふれたドル
世界経済はインフレに巻き込まれ、ヨーロッパでは、石油価格上昇に抗議して、各地で大規模なストやデモが発生し、発展途上国では、食料価格が暴騰したので、数億人が飢えに苦しんである。アメリカの大都市では、自動車通勤が減った。
インフレの原因は何か。中国を軸に考えると、中国は安い工業製品を世界に輸出して膨大な外貨を稼いだが、貧富の差が大きいので、裕福層は一層裕福になって収入を使い切れず、貯蓄を増やしている。もし収入を使い切れば、内需が増え、輸入が増えるはずであるが、貯蓄するので外貨が溜まり、遂に中国は世界最大の外貨所有国になった。
中国は、その外貨によって、アメリカの国債や証券を買っている。アメリカが貿易収支の赤字を決済するために、中国へ支払ったドルは、結局アメリカへ戻ってくるのだ。そのため、アメリカは貿易収支の赤字がどれだけ増えても全く困らなかった。アメリカの金融機関は戻ってきた膨大なドルを集め、世界の金融市場に投資したので、ドルが世界に溢れた。
中国経済は高成長を続け、購買力平価で換算したGDPも石油の消費量も世界第2位になり、原油の輸入額は激増した。原油価格の上昇に伴って、莫大なドルが産油国に集った。大産油国は人口が少ないのでそれを使いきれず、余ったドルは世界の金融市場に投資されので、ドルの供給過剰に拍車がかかった。
昨年の初めまでは、世界の金融市場には安全だと思われた証券が豊富にあった。それはアメリカの金融機関が高度な金融工学を駆使して、貸出債権を証券化した新金融商品を市場に送り続けたからだ。ところが、サブプライム問題が発生し、この金融商品は危ないことが判り、過剰ドルは行き先を失った。
折から、中国の原油輸入が増大し続け、また穀物の生産国で干ばつや洪水が発生したので、過剰ドルはこれらの商品に対する投機に投入され、価格が見る見るうちに、急上昇した2年ぐらい前まで、中国の安い製品が世界に供給されたので、世界の物価が安定していた。しかし、最近では、中国の沿岸地方では労働力が不足し、賃金が急ピッチで上昇している。中国政府は、今年から外資優遇措置は重要産業だけに絞り、また輸出助成政策を止めて、輸出主導型経済から内需主導型に変えることを決めた。安い中国製品は、次第に市場から姿を消すだろう。
元レート切り上げを
欧州中央銀行は、EU経済の景気の先行きに不安があるが、今月の始め政策金利を引き揚げ、断固としてインフレを抑制する姿勢を示した。ところがアメリカはそうはいかない。経済が深刻な状況に落ち込み、住宅投資や個人消費が不振である。その上銀行は自己資本が不足し、信用を失っているので、増資が困難だ。10年前、金融危機で苦しんだ日本に似ており、とても金利を引き上げられる状態ではない。アメリカの金利がEUよりかなり低いので、ドル安が進みそうだ。
インフレは、サミットで何を決議しても止らない。さし当たっては中国が元レートを切り上げて貿易収支黒字を減らし、アメリカはドル安を利用して輸出を伸ばすべきだ。
根本的には、中国では所得格差の縮小と社会保障の充実によって個人消費を刺激して貯蓄過剰を解消し、アメリカは過剰消費の癖を直し貯蓄に励み、省石油型社会の建設に投資すべきだ。
アメリカと中国は大国であるから世界に責任があるはずだ。アメリカは、30年前には対日批判を繰り返し、経済システムの改革を要求した。中国は長い間日本の戦争責任を追求した。私達も、現在は、遠慮なく、アメリカの過剰消費と中国の過剰貯蓄の体質の改善を要求すべきだろう。