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5月19日
脱・石油の国造り目指せ
ドル不安と新興国急成長
石油価格が暴騰し、昨年初めには1バーレル50ドルだったが、現在では130ドルになった。経済原則から云えば、価格が暴騰すれば、需要が減少し供給が増加するから、価格は適正な水準に戻るはずだ。昔の話になるが、1970年代の「石油ショック」時、原油価格は1バーレル3ドルから34ドルまで上昇した。工業国では省エネが進み、世界各地で油田が開発され、原油価格は間もなく10~20ドルの水準に戻った。
今回はどうだろうか。原油価格の暴騰には2つの原因がある。その1つはアメリカの金融システムが混乱し、ドルの信頼性が失われたことだ。世界の過剰資金が原油の先物市場に流入し、投機的な値上がりが発生した。しかし、最近アメリカの輸出が増加し始めた。、またユーロの信頼性が高まり、国際通貨は少しずつユーロに変わっているから、ドル不安の要因は徐々に消え投機は止まるだろう。
ところが、もう1つの原因は、新興国の急成長による需要の拡大であって、これは当分の間消えそうもない。人口・13億人の中国経済は10%、11億人のインド経済は8%と、それぞれ高成長を遂げつつあり、両国ともエネルギー価格の上昇を吸収する経済力を備えてしまった。
日本にとっては、原油価格が130ドルまで上昇すると、年間、15兆円を越す所得が新たに産油国へ移転されることになる。それはGDPの3%にあたり、日本経済は2%成長(実質)の力しかないから、原油価格が急上昇した年(今年)は、実質マイナス成長になるはずだ。
ところが、10%成長している國にとっては、GDPの3%ぐらいの所得を奪われても、まだ7%ぐらいの経済成長が可能である。中国では年所得が1万ドルを超える所帯人口は2億人に、インドでは1億人に近づき、分厚い中産階級が育った。エネルギー価格が上昇しても、彼等の所得はそれを遙かに超えるスピードで伸びているから消費は衰えない。また省エネ投資が増加するので、その設備投資が経済成長を押し上げる力になる。
アラビア半島の産油国では、巨大な金融・リゾート都市、大規模な鉄鋼工場や石油コンビナートが続々と建設されている。その工事のために膨大な中国製品が輸出され、また出稼ぎインド人の賃金が急速に上昇している。中国やインドは輸出の増加や出稼ぎ労働者の本国送金によって、流出した原油輸入代金を取り戻している。
高・原油価格時代の到来
こうした新興国の動向をみると、石油需要は、一時的に減ることはあっても、長期的な傾向として増える一方である。それは石油だけではない。新興国の需要によって、食料、金属、鉄鉱石、粘結炭から、古紙、くず鉄に到るまで不足して、国際価格が暴騰している。
原油価格は、投機による仮需要が消滅したとしても、新興国の需要によって100ドルぐらいの高い水準に止まり、長期的には、上昇傾向を続けるに違いない。中国は国営石油会社が政府と一体になって、アフリカで膨大な資金を投入して石油利権を買っているが、激増する需要を賄いきれないだろう。
日本政府は、高・原油価格時代に移ったこと、新興国によって世界の大気汚染が進むことを認識して、将来の国際的地位を向上させるため、脱石油の国造りを目指した長期的プログラムを実施すべきだ。太陽、風力発電、原子力を中心としたエネルギーの供給体制を築き、同時に都市をコンパクトにして、都市内の交通は徒歩、自転車、電車、バス(電池自動車)だけにして、石油需要を減らすのである。緑に囲まれ、安全で歩きやすく、空気が澄んだ都市には、学問や文化が栄えるものだ。文化産業は省エネであり、成長力が弱まった日本に相応しい産業だ。