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1月31日
米政府は公的資金投入を
加速する景気の悪循環
アメリカでは、金融機関の経営が悪化するとともに、景気が後退し、世界経済の足を下方に引っ張っている。
金融機関の焦げ付きローンは増加の一途を辿っている。サブ・プライム・ローン(低所得者向け住宅ローン)の焦げ付き額は10兆円を超え、間もなく、30兆円になると言われている。中所得者が利用している住宅ローンや消費者ローンでも、焦げ付きが増えている。
つぎに、貸付債権を担保として発行された金融証券の価格が暴落した。それは元になる貸付債権が焦げ付いたからだ。その金融証券の発行総額は300兆円に達し、銀行は巨額の資金を金融証券の購入に投下したので、価格暴落によって、甚大な被害を受けた。
銀行は、損失が明らかになる都度、償却している。そのため自己資本が減少し、自己資本比率が8%を割りそうな大銀行もある。8%を切ると国際的なルールによって、国際的な金融活動が禁止されるから、打撃が大きい。
自己資本比率を上昇させるには、増資が必要である。シティグループは、高配当を約束して、約2兆円の優先株をアブダビやシンガポールの国営ファンドに引き受けて貰った。また、銀行は自己資本比率の分子である貸付資産、つまり住宅ローンや消費者ローンを圧縮しなければならない。
ところで、アメリカ人はローン漬けの生活を送っていたが、2年前まで、ローンで買った住宅の市場価格が急上昇していたので、ローンが少しも気にならなかった。しかし、現在では、住宅の市場価格が下降し続け、またローンの借り換えを拒否されるので、生活が苦しくなった。
こうした結果、住宅投資は1年前に較べると40%も減り、自動車は売れなくなり、失業者が増え始めた。銀行の不良資産が景気の悪化を招き、景気の悪化が不良資産をさらに増やすという悪循環が始まった。
経済には良い方向にでも悪い方向にでも、一旦走り出すと、加速するという性質がある。シティグループは、所有している証券の評価額が瞬く間に下がり、2ヶ月で20%も減少した。日本では1999年の金融不況の時、銀行の不良資産が1年間で3倍に膨張した。
利下げ、減税は評価されず
アメリカの連邦準備制度理事会は、景気の急速な下降を恐れて、1月22日に、0.75%の大幅な緊急利下げに踏み切った。さらに、政府は減税など16兆円の緊急対策を実施する予定だ。しかし、それだけでは、景気下降の勢いを止められない。株価は景気の先行指標であるが、アメリカの株価と、アメリカ経済との関係が深い国の株価について推移を見ると、これらの政策を評価した形跡がない。
アメリカ政府に期待されるのは、公的資金の投入に踏み切ることだ。例えば、政府機関が不良債権化したサブ・プライムローンを買い取り、長期・低利なローンに転換する。また、政府機関が銀行に出資して自己資本不足を解消させる。そうすれば、貸し渋りが止まり、住宅投資が回復し、個人消費が盛り上がるはずだ。アメリカは人口増加国であるから、景気回復力は強いはずだ。
公的資金の投入に対しては、世論は破産しそうな人や危ない銀行を救済するのは、自己責任の原則に反すると非難するだろう。政府がそれを恐れて、不良債権問題の解決を先送りすれば、10年前の日本経済の失敗を繰り返すことになる。
アメリカ経済は、世界経済に占めるウエイトが低下したとは言え、まだ影響力が強大であり、政策を誤れば、世界大不況の引き金になりかねない。公的資金の投入が、減税より、はるかに重要な政策である。