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10月24日
拡大中国が狙う制海権
米国の要求素直に応ぜず
アメリカ経済は、個人消費が弱く、先行きが暗い。それは借金が多すぎるからだ。全世帯の4分の1は、住宅ローン残高が時価より大きい。そのため住宅競売件数が減らない。多くの家庭がローン返済のため生活を切りつめている。雇用さえ増えれば、個人所得が増加し、借金が返済され、消費が上昇するが、雇用が増える気配がない。
アメリカの企業は弱気であって、設備投資を減らし、金余りの状態だ。過剰資金は中国に直接投資され、工場、管理機能、研究所等が中国に移転され、中国人の管理者の下で中国人が働いている。アメリカの雇用が中国に吸われているのだ。
その結果、アメリカ企業の中国製商品がアメリカ市場を席巻し、アメリカは巨額な輸入超過国になった。しかし、有り難いことに、中国政府はずっとアメリカ国債を買い、膨大な資金をアメリカに供給し続けた。そのためアメリカでは金融が緩和し、4年前まで住宅バブル経済が続き、中国の対米輸出は面白いように増加した。
アメリカの企業は、中国への直接投資から莫大な利益をあげ、その代償としてアメリカの工業力が中国に移転して中国は世界の工業大国に成長した。一方、アメリカは金融大国に変質して、サブプライムローンのような詐欺紛いの金融商品が開発され、その最終的な付けが、リーマンショック以降の景気低迷だった。政府は、財政拡大、金融超緩和といった緊急措置を実施したが、失業率は現在でも低下せず、その半分が長期失業者である。
アメリカに残された対策は輸出の増大であり、アメリカ政府はドル安政策を進め、中国に対し元高政策を強く迫っている。
中国はインフレを止めるため元高にしたい。しかし、そのテンポが速すぎると、世界的な不況が進行しているから、輸出が激減する恐れがあり、貧富の差が大きいので、景気後退は暴動を誘発する可能性がある。
中国は、今月19日にインフレを抑えるために金利を引き上げ、同時にそれによる海外資金の流入を防ぐため、いくらか元安にした。アメリカの要求には素直に応じないという姿勢である。
中国は7~8%ぐらいの持続的な経済成長を狙っている。人口13億人の中国がそれを実現するには、まず膨大な量のエネルギーや金属資源の確保が必要だ。中国の資源開発投資は西アジア、ロシア、中東からアフリカにまで広がり、アフリカでは53カ国中実に43カ国に開発投資している。
標的にされた尖閣列島
それと同時に、中国にとっての安全な輸送ルートをつくりたい。そのため隣接国に高速道路やパイプラインを建設し、インド洋沿いには港湾開発を援助しつつある。中東・アフリカ・南米の資源については、非常の場合にインド洋や太平洋の輸送を守らなければならない。また中国は、東アジア諸国との貿易額が拡大し、経済的な相互依存関係が強まったので、安全な輸送が望まれる。
アメリカの覇権力の源は、世界の制海権を握り、非常の場合、如何なる國に対しても、輸送ルートを遮断して経済的掣肘を加える能力を持っていることだ。ところが、中国は東方の海と南方の海を、それぞれ親米の日本とベトナム・フィリッピンに塞がれている。中国はこれを突破し、将来、人口や経済力に応じた制海権を持つ準備をしたい。
その方法は、チャンスを見つけて、僅かずつアメリカ支配に打撃を加えることだ。アメリカと日本が経済力と政府指導力が低下した時、尖閣列島が狙われた。これを防ぐには、日本経済とアメリカ経済が立ち直り、政府が強くなることだ。その時には、東南アジア諸国も日本側につく。孫子の兵法では、相手に力がある時には、攻めないものだ。