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6月24日
菅内閣の消費税増税の狙い
法人税を国際水準に
菅内閣は財政再建と経済成長を同時に達成するという難題に挑戦する決意である。そのポイントは5つである。
第1は、法人税税率を国際水準まで下げることだ。税負担が軽くなると、企業の設備投資意欲が強まる。今まで、多くの企業が重税を嫌って、生産拠点や本社機能を海外に移転したが、その動きが止まるだけではなく、中国の賃金が急上昇しているから、生産拠点の一部が国内回帰するかもしれない。
法人税率の低下とともに、外国企業が日本に進出し、さらに日本企業の買収が増えるだろう。そうした結果、日本経済は活気づき、雇用が拡大し、税収が増加し始める。
第2は、消費税を引き上げ、社会福祉の財源を増やすことだ。日本の財政は惨憺たる状態にあり、今年度予算では、税収が37兆円しかなく、42兆円の国債を発行して赤字を埋めた。国家の借金総額は、GDPの1.8倍に達し、この比率はギリシャやスペインより遙かに大きい。
今後、社会保障費は毎年1兆円ベースで増える。また来年から、基礎年金の半分が國の負担になるから、毎年2.5兆円が必要であるが、今までのように、政府が国債を増発し、それを国内の金融機関に売って、財政資金を調達するわけにはいかない。それは、預金を取り崩して生活している高齢者が増え、金融機関の預金が減りそうであるからだ。
そうなると、政府は国債を海外市場で売らざるをえない。海外市場では国債金利が変動しやすく、現在の1%台から、軽く2%台に上昇するだろう。そうなった時には金利支払額は40兆円になり、国家予算額の半分近くを占めてしまう。海外の投資家は、そんな破産状態の國の国債を敬遠するから、日本は確実に現在のギリシャのようになる。
したがって、どうしても消費税率の引き上げが必要である。菅総理はさし当たって10%を目途にし、12兆円の増税を狙っている。
第3は、雇用の拡大である。消費税が増えれば、個人消費が減退し、景気が下降して、失業が増えるはずであるが、政府は増税額を介護や医療の支出に当てるから、そこには膨大な雇用が生まれるという。
現在、介護や医療の分野では、供給力不足であって、老人ホームは何年待っても入れない。癌の総合診断は半年以上も待たされ、手術が必要であっても、さらに数ヶ月待たされる。その原因は、この分野では、低賃金と過重労働のため、人手不足になっていることだ。
福祉分野が経済成長の鍵
介護や医療の予算を増やし、賃金を引き上げれば、終身この分野で働きたいという人が100万人単位で現れる。彼等は消費を増やし、また私たちも、老後の不安が消えるから、消費を増やすはずだ。こうした需要の増加が日本経済の成長を支えるという。
第4は国民総背番号制の導入である。それは消費税の逆進性を防ぐためだ。貧しい人も、買い物をする時、は例外なく消費税を支払う。しかし、国民総背番号制によって、税務署がすべての国民の所得を正確に把握し、政府は貧しい人だけに生活援助金を交付するという公正な制度をつくるのである。
国民総背番号制について、国家権力がプライバシーを侵害する制度だと批判する人がいる。残念ながら、菅総理は腰が引けており、世論におもね、生活必需品に対して税率を低くするとも言っている。
第5は、最も重要なことであるが、政府と議会が、国民と同じように、身を削って財政再建に協力することだ。それは無駄な財政支出をなくすだけではなく、さらに踏み込み、公務員の賃金を20%カットし、国会議員の数を10~20%減らすのである。これを実現できれば、国民の政府に対する信頼が一挙に高まり、財政再建の道が明るくなる。