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7月8日
世界的な財政再建と経済均衡への道
投機対象にされる経済破綻国
今世紀になると、世界経済は小賢しい金融技術や制度改革によって動かされた。その1例はサブプライム・ローンだ。投資銀行は質の悪い住宅債権を、他の多様な債権と複雑に組み合わせ、内容が判らない新証券を創って、世界の金融機関に売却して資金を回収した。一種の詐欺である。
欧米の金融機関がババを引き、価格が暴落した新証券を抱え、貸し剥がしによって、経営危機を脱した。それがリーマン・ショックを生んだ。造り過ぎた住宅は2束3文で売られ、金融によって膨張しすぎた経済が急速に縮小した。
もう1つの例は経済弱国のユーロ加盟であり、典型はギリシャだ。それまでは高金利で海外資金を借り入れ、財政赤字を埋めていたが、通貨がユーロに変わると、信用力が高いユーロ建て国債を低利で発行できた。その資金はインフラに投資され、賃金が上昇し、高級車が続々と輸入された。ドイツの銀行は資金を貸して稼ぎ、自動車を売って儲けた。
ところが、ドイツ等の西欧銀行は、サブプライム関連の新証券を大量に持っていたので、リーマンショックとともに巨大な損失を受け、機能が縮小した。そのため、ギリシャ政府は忽ち資金繰りに詰まり、財政支出を大幅にカットし、IMF等から救済融資を受けた。
ギリシャを追って、ポルトガルやスペイン等の財政破綻國の国債価格が暴落し、それらの国債を持っている西欧の銀行は大損失を受け、EU経済は資金が動かなくなったため、不況が深刻化した。
欧米主要国は大不況を避けるため、公的資金を投入して銀行を救済し、同時に未曾有のスケールの財政拡大政策を実施した。その原資は国債の大発行であって、主に中央銀行がそれを引き受けた。
その過程で、世界の通貨量は10年間で6倍も増えた。その過剰資金は年金・生命保険・信託など機関投資家に集まり、高収益を上げるヘッジファンドに運用が任された。
ヘッジファンドは発行額が激増した問題国の国債を狙った。世界に張り巡らされた情報網から、目先、どの國の財政が破綻しそうかといった見通しが集まる。直ちに空売りなどの方法によって、ごく短期間で巨額な利益をひねり出すのだ。まずギリシャが狙われ、ついでポルトガルとスペインへと拡がっている。
投機対象に選ばれた國は、彼等の天文学的資金量を利用した国債空売り等の投機的行動によって、忽ち経済的な混乱に落ち込むが、ヘッジファンドは、そのことには無関心だ。彼等の目的は利益を増大やし、年金基金等への配当を増やすことだ。
国債発行抑制、金利規制が鍵
その対策は2つしかない。その1つは財政を再建し、国債発行額を減らすことだ。ドイツ、フランス、スペインは予算をカットし、それに反対する労働運動が激しくなった。オバマ政権も増税に向い、日本も消費税を引き上げるだろう。 世界はこれからデフレ経済に向かい、贅肉を落としだろう。
もう1つは、金融規制を厳しくしてヘッジファンドの行動を抑えることである。ドイツやアメリカの政権は熱心である。
世界の企業はデフレ経済(需要不足)を予想し、設備投資を抑えているから、世界の過剰資金が増えている。その一時的避難場所としてアメリカや日本の国債購入に向かっているが、安心できる投資先ではない。
中国は内需拡大政策に転換した。中国経済がインフラ需要に支えられて高成長を続ければ、膨大な建設・設備投資と巨額な資金需要が生まれ、世界経済の不均衡を解消できる。中国、インド等の新興国で継続的に需要が増えれば、生産が活発になり、世界の過剰資金を吸収するから、金融機関の怪しげな活動が不可能になり、世界経済は正常化する。世界経済を支えるべき國が変わったと云える。