静岡新聞論壇

1月31日

バブル崩壊と金融危機

繰り返された日米の失敗

日本では80年代後半に土地バブルが発生し、アメリカは、02年から4年間近く住宅バブルに襲われた。バブル経済が崩壊する時、恐ろしい金融危機が始まる。それは地価や住宅価格が暴落するから、不動産業者への貸し付けや住宅ローンが瞬く間に不良債権に変わるからだ。

銀行の店頭には預金を引き下ろす人が群がり、信用不安が広がる。銀行の連鎖倒産が起こり、経済活動が凍結してしまう。その時には、緊急対策が必要である。まず中央銀行が大型銀行に無制限の緊急融資を行う。政府は「預金保護」を声明し、大型銀行に巨額な公的資金を投入して資本を増強するのだ。銀行の信用を回復すると危機が収まる。

日本では、反対勢力が強かったので緊急対策が遅れて経済が長期間停滞した。この時期に韓国や台湾のIT企業は大型投資を開始した。その結果日本のIT産業は韓国・台湾に水をあけられ、日本経済の国際的地位は無惨なほど低下した。

アメリカは日本の悲惨な例に学び、緊急対策をいち早く実施した。しかしリーマンブラザースを倒産させたのが失敗だった。深刻な金融危機が発生し、現在でも失業率が10%台にあり、国民生活はすっかり疲弊した。

ところが、最近、大規模の財政拡大と超低金利の政策効果があらわれ、生産活動がいくらか活発になってきた。もし、景気が上昇に転ずると、過剰通貨が溢れているので、数年先にバブル経済が発生するかもしれない。

バブルの防止は難しい。それはバブル経済かどうかを判断できないからだ。澄田日銀総裁とグリーンスパーンFRB議長はともに判断ミスを犯した。澄田総裁は80年代の後半に地価が上昇した時、卸物価が安定しているから心配ないと判断し、金融を一段と緩和してバブルを煽ってしまった。。

グリーンスパーン議長は金融緩和状態が好きだった。90年代のアメリカではIT技術が進歩し、またソ連が崩壊してアメリカの一極支配が完成したので将来が明るく見えた。金利が未曾有のスピードで引き下げられ、明るい見通しと相まって、住宅需要を刺激した。

住宅金融会社は低利資金を調達し、貧民層にも積極的に住宅資金を貸した(サブプライムローン)。借り手は住宅価格の上昇を予想し、年所得の60倍に達する程の巨額資金を住宅購入に充当した。

オバマが目指す規制案

住宅金融会社は貸し付け債権をすぐに銀行に売却し、それによって得た資金を再び融資に向けたので、融資額は雪だるま式に膨張した。信用創造が行われたのだ。銀行は買い集めた多様な貸し付け債権を束ね、金融工学を利用して、それを多数の新証券に分割して内外の機関投資家に売却した。

機関投資家は複雑な金融工学に圧倒され、この新証券にはリスクがないと錯覚した。新証券の売れ行きは好調であり、住宅金融会社は潤沢な資金を住宅ローンに集中した。住宅価格が急上昇し住宅バブルが起きた。グリーンスパーン議長はこれを順調な景気上昇だと判断し、傍観するだけだった。

中央銀行の判断は当てにならないから、バブルを防ぐには金融規制が必要だ。オバマ大統領は銀行業と証券業を厳しく区分して、預金で集めた資金が投機市場に流入するのを規制する案を用意している。

アメリカの金融業は今世紀に入る頃から複雑な証券化技術を利用して稼ぎまくった末に、08年に世界的な金融危機を引き起こした。オバマは証券化への資金ルートを絶ち、90年代から広がったる「金融革命」にストップをかけようとしている。金融業が信用を回復するのはそれしか方法がない。オバマは、次第にニューディール政策を実施したルーズベルトに似てきた。

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