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4月29日
元高でも、中国経済は伸びる。
中国は、毎年巨額な貿易黒字を計上しているので、アメリカやEUから元高を迫られている。しかし、元高になっても、貿易黒字は減りそうもない。
中国経済の特色は設備投資が大きいことだ。新しい機械設備が膨大な生産物を産出し、余剰な生産物が輸出され、巨大な貿易収支黒字を生んでいる。
設備投資が大きいのは、中国の統治システムと深く結びついているからだ。中国では地方政府(省、特別区、市、県等)の権限が強く、財政支出の大部分を自由に決めている。しかし、地方政府の首長は上級の政府の任命であって、目標にすべき地域の経済指標(例えば経済成長率)が上級の政府から与えられ、それが混乱なく達成されると、首長は評価が高まり、上級政府の幹部へ、さらに中央政府の幹部へと昇進する。どの首長も他の首長と経済発展競争を強いられているのだ。中国は厳しい競争社会である。
経済発展には、まず製造業の育成が必要であり、地方政府は知恵を絞った。多くの大都市は農地を安く買い上げて、そこに工業団地と住宅団地を造成し、企業に高い価格で売却した。その利益をインフラ整備に投入して、工業化と都市化を進めた。最近では、発達が遅れている内陸部で、こうした都市化と工業化が広がった。
また地方政府は熱心に企業を育成した。例をあげよう。将来性ある民間企業に対して銀行融資を斡旋する。民間企業の経営基盤を強めるため、経営者をそのままにして、株式の過半を購入して半国営化する。地方政府が企業を起こことが多い。それらの企業が成功し、規模が拡大すると、民間企業家に生産を請け負わる。沿岸地域には、こうして次々と巨大企業が育った。
中央政府、地方政府、国営企業、民間企業では、幹部職員は勿論のこと一般職員の大部分が共産党員であり、彼らは知識と判断力に優れている。党員は7000万人を超え、熱心に働き、中国の政治・経済を動かし、恵まれた生活を送っている。汚職は減らないが、優秀な首長が昇進を目指して仕事に打ち込んでいるから、経済は高成長を続けている。
その結果約2億人の中産階級が生まれた。しかし、まだ10億人が貧しいので、中国経済は、個人消費主導型の経済成長路線に変わることができない。今後も政府主導によって製造業の設備投資を増やし、雇用を拡大して所得を底上げする必要がある。当分の間、新設備が膨大な生産物を生み出すから、中国の貿易収支黒字は減りそうもない。アメリカ経済は、中国と対照的に過剰消費(輸入過剰)の体質を備え、巨額な貿易赤字に苦しんでいる。リーマンショック後、一時的に貿易赤字が縮小したが、景気の反転とともに過剰消費に戻った。アメリカとしては元高にして対中貿易赤字を減らし、景気浮揚力を強めたい。
振り返ると、アメリカは80年代の中頃、日本に対して円高を強要し、日本政府はそれに応じた。政府は「円高ショック」を緩和するため、財政拡大と未曾有のスケールの金融緩和政策を実施し、異常な土地バブル経済を発生させてしまった。
政府は強引な方法でバブル経済を押さつけた。その結果、90年代始めから金融危機と「失われた10年」が始まり、その後も日本経済は低迷し続け、08年のGDPは17年前と同じである。アメリカの期待通り、日本経済は沈没し、輸出力を失った。元高傾向は避けられない。中国政府は日本の失敗を避けるため、元高のタイミング、スピード、限度が重要であり、それを誤ると、中国経済は混乱し、共産党支配の体制が崩れる危険性があることを知っている。